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第二章 ボーダーライン12

 深夜。硬い床の上で寝ていた宏輝は、身体の痛みを感じ、目を覚ます。泣き腫らした頬に涙の痕がこびりついている。鼻の奥が痛い。頭の中もぼんやりとしている。ひどく喉が渇いた。宏輝はむっくりと起き上がり、なかば這うような形で台所へと移動する。  冷蔵庫まで辿り着き、それを支えに立ち上がる。冷蔵室の扉を開くと二リットルのペットボトル入りの緑茶があったので、それを手に取り、扉を閉める。残量が少なかったので、そのまま直飲みした。  喉が潤い人心地つくと、足元からぞくりと寒さを感じる。五月の半ばに入っても、夜中はまだ寒い。靴下を履いていたとはいえ、ずいぶんと冷えてしまったようだ。宏輝は空になったペットボトルをゴミ袋に捨て、ベッドにもぐりこむ。  頭から掛布団を被り、ひとり暗闇の世界へ落ちていく。  だが、一度醒めた眠気はなかなかやってこない。そうすると脳裏に浮かぶのは将大の悲しそうな姿だけだ。  ――……俺にも相談できないのか? 「……マサくん」  流しきったはずの涙がじわじわと溢れ出る。 「マサくん……マサくん……」  どうしてあんな物言いしかできなかったのだろう。どうしてもっと素直になれなかったのだろう。後悔に後悔が重なり、宏輝は自己嫌悪に陥る。布団の中は熱く息苦しかったが、このまま惨めな姿をさらすぐらいなら、いっそこのまま時が止まってしまえばいいと思った。そのまま朝になるまで、宏輝は一睡もできなかった。

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