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第三章 第三の男3
「あれ? 今日はあの人いないんですか? ええっと、何て言いましたっけ?」
「……どうして?」
「ああ、そうだ長谷川。長谷川だ。んで? ウッチー先輩、今日は長谷川先輩と一緒じゃないんですか? 残念だな」
言葉とは裏腹にまったく残念がらない様子の間宮に、宏輝は警戒心を覚える。
ストーカーからの接触を受けた翌日、宏輝はいつものように大学へ行き、いつものように講義を受けた。当然将大も一緒だ。だが、昼食時になって将大は用事があると言って席を外してしまう。食堂でひとりぽつねんと待っているときに、間宮が接触したのだ。
「ウッチー先輩、ちゃんとご飯食べてます? これ以上痩せたら倒れちゃいますよ」
宏輝の隣に座った間宮は、なおも話しかけてくる。将大以外でここまで関わってくる人物は初めてで、宏輝はどう対処すればいいのかわからなかった。
「先輩、俺の話聞いてます?」
固まったまま何も話さない宏輝に苛立ったのか、間宮のまとう空気が変わる。
「今度先輩んち行きたいんだけど、いつなら空いてます?」
「……え?」
「聞こえませんでした? 俺、先輩んち行きたいです。俺と遊びましょうよ」
「どうして? 僕はお前と関わる理由はない」
「そんなに悲しいこと言わないで」
間宮が宏輝に身を寄せてくる。壁際に座っている宏輝に逃げ場はなかった。
「駄目ですかね?」
間宮は耳元で囁き「俺、先輩ともっと仲良くなりたいんですよ」と言った。
その息遣いに既視感を覚える。嫌な予感に背筋を凍らせると、間宮はテーブルの下で手を繋いできた。
「……間宮、止めろっ」
気持ちが悪い。皮膚と皮膚が密着している。宏輝は自分を落ち着かせようとしたが、間宮は止まらない。
「先輩には月が似合いますね……」
「え……?」
「月明かりの下の先輩、とても綺麗でしたよ」
「……っ!」
椅子から立ち上がろうとする宏輝の肩を掴み、間宮はさらに続ける。
「ねえ、先輩。いつなら遊びに行っていいですか?」
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