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第三章 第三の男5

 宏輝がストーカーに襲われた月曜日の夜、将大は宏輝から電話を受け、彼のアパートに向かった。  将大が部屋に入った瞬間、宏輝は真っ先に抱きつき、決して離そうとはしなかった。見ると、ガタガタと震えている。宏輝の身に何か起きたことは明白だった。 「宏輝……」  だが、将大は宏輝の身体を抱き返すことができない。数日前の苦い記憶がよみがえる。もどかしさだけがつのった。 「……大丈夫だ、ヒロ」  幼いころから慣れ親しんだ名で宏輝を呼ぶ。宏輝は将大の胸に顔を埋め「マサくん」と繰り返す。  どれくらいそうしていたのだろう。宏輝は少しずつ落ち着きを取り戻した。 「マサくんに聞いてほしいことがある……」  こうして宏輝はこれまでに受けたストーカー被害を、すべて将大に打ち明けたのだ。始まりは粘着質な視線、それから不思議なカード。そして――。 「誰かに付きまとわれている……」  宏輝は泣きながら告白を続ける。 「月曜に、会いに来るって……そう書いてあって……っ、さ、さっき、帰り道で誰かに触られて怖くて気持ち悪くて吐きそうで……っ、あ、ど、どうしようマサくん……」  衝撃的な内容だったが、将大は顔に出さず、ただ黙って宏輝の話を聞く。 「今でも気持ち悪いっ、首の後ろ舐められて、い、息が耳にかかって……ああそうだ耳の中も舐められたんだ……どうしようどうしよう、怖いよマサくん、僕、怖い……!」 「大丈夫だ」  その声で、宏輝は顔を上げる。 「俺が守る」  何度も聞いてきた言葉。 「ヒロは俺が守る。もう誰にも触らせない。俺が絶対に守る」 「……ありがとう、マサくん」  ようやく宏輝の顔に笑みが浮かんだ。

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