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第三章 第三の男6

 内田宏輝はストーカー被害に遭っていた。  長谷川将大は幼馴染の口から告げられた事実に、しばらくの間言葉が出なかった。聞いているだけで不快感がつのる内容だ。聞き手である自分がそう思うくらいだから、被害者である宏輝は、どれほど怖い思いをしたのだろう。想像するだけで怒りが沸いてくる。  ストーカーの正体は、あの間宮夏紀という男である。将大は数回会っただけの間宮の容姿を思い出そうとするが、派手な印象とは対照的に肝心の顔が出てこない。将大の中ではその程度の男だったのだ。  思い返すと、たしかに間宮は必要以上に宏輝に接触していた。だが、まさかここまで悪質な手段に出るとは思ってもみなかった。  自分に縋り、震えていた宏輝の姿を思い出すと、これ以上黙っていることはできない。  将大はスマートフォンを取り出し、あらかじめ宏輝から教えてもらった番号を入力する。我慢の限界だった。  数回のコール音の後、相手は喜々とした声色で通話に出た。 『ウッチー先輩?』 「……間宮か?」 『あれ? もしかして長谷川先輩ですか。どうして俺の番号知ってるんです?』 「宏輝に近づくな」  将大は鋭い声で牽制する。だが、間宮には通用しない。それどころか将大が訊きもしないことをべらべらとしゃべりだす始末だ。 『俺、本当はウッチー先輩からの電話を待ってたのに、まさかアンタが先だとは思いませんでした。この番号ウッチー先輩に聞いたんですか? 俺、あの人にしか教えてないもん。やらしいなあ――ってことは、俺のこと先輩から全部聞いちゃった感じですね。どうしよう。俺のこと邪魔する気ですよね。俺の楽しみ奪わないでもらえます?』 「楽しみだと? 宏輝を怯えさせて何が楽しいんだ。ふざけるのも大概にしろ」 『ふざけてなんていませんよ。俺は真剣です。だってウッチー先輩のことが好きだから。今日もね、先輩とデートする約束したんです。早く先輩に会いたいなあ』 「あいつがお前に近づくと本気で思っているのか?」  将大が訊くと、間宮は少し考えて「まさか」と返す。 『先輩はそこまで馬鹿じゃないですよ。でもね――』  電話越しの間宮の空気が変わる。 『――それ以前に、アンタは先輩を守れないよ』 「……何だと?」 『大丈夫。ウッチー先輩は俺が守りますから』 「おいっ!」 『じゃあね、長谷川先輩』  通話は一方的に切れた。

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