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第四章 手のひらの記憶9
「ヒロっ!」
将大が奥へ進むと突き当たりにある寝室のベッドの上に、苦しそうにうずくまる宏輝と、呆然と座りこむ間宮の姿があった。
将大は間宮を突き飛ばし宏輝のもとへ向かう。
「ヒロ、大丈夫か!」
顔色が悪く呼吸の間隔が短い。とっさに過呼吸だと判断した将大は、縛られた両腕や乱れた服装の様子からその原因に気づく。
「間宮……っ」
「長谷川先輩、俺……」
「出て行け」
「先輩……」
「二度と宏輝に近寄るなっ!」
間宮は何かを言おうと口を開いたが、将大が睨みを効かせるとそのまま部屋を出て行った。
「ヒロ……」
将大は間宮が退出したのを見送ると、急いで宏輝の元へ近寄る。
「マサくん……っ」
宏輝は将大と目が合うと顔を歪めてぼろぼろと泣き出してしまう。しゃくりあげる嗚咽が喉をさらに狭め、不規則な呼吸に拍車をかけていく。
「ぼ、僕……っ、怖くて、ま、間宮っ、間宮が、間宮が僕を……っ」
「大丈夫だ、ヒロ」
「こんな僕、やだっ……汚い、汚い汚い汚いっ」
「俺がいるから」
将大は宏輝を刺激しないように、柔らかい口調でなだめていく。
「間宮はもう来ない。ヒロは大丈夫だ。俺が守るから」
「マサくん……マサくん……っ」
「――触ってもいいか? 手を解いてあげたいんだ」
「怖いことしない?」
「大丈夫。大丈夫だから」
将大が宏輝の両腕を縛めるベルトを解くと、細い手首には痛々しい擦過傷が残っていた。
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