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第七章 蜜月3

 自宅アパートに着いた宏輝は、扉を開けようとズボンのポケットを探したが、目的のものは見つからなかった。将大のアパートに忘れてきたのだろう。だが、どうしても戻る気にはなれなかった。飛び出してきた手前、将大に会うのは嫌だし、恥ずかしい。  あの男なら――間宮なら合鍵のひとつでも作っていそうだが、その真偽を確かめるのは危険すぎる。やはり間宮に会うのは怖い。だが、アパートに帰る最終手段として、間宮に協力を願うのも、悪くはないなと思った。  ――今の僕は、マサくんじゃなくて間宮のことばかりを考える。  本当に、何なんだろうな自分は。  うじうじとした思考のまま、宏輝はアパートへ帰ることを諦め、直接大学へ向かうことにする。だが、いくらなんでも朝早すぎて、開いてはいないだろう。大学へ向かいかけていた足は一度止まり、それからはあてもなくフラフラとさまよい、気がつくと近所の児童公園の中にいた。  自分が子供だった頃は、もっとたくさん遊具があったような気がする。ブランコに滑り台。高さの違う鉄棒に、グルグルと回転する地球――という名前なのかは知らない。他にも輪がいくつも連なったようなトンネル状の遊具に、巨大なタコの形をした何か。カラフルに塗装された半分地面に埋まったタイヤも、ここにはない。あるのはペンキが剥げかけたベンチだけだ。  宏輝は十年の時の長さを改めて実感した。  でもここには、宏輝が恐れているものがない。それだけで宏輝はひどく安心をする。この場に留まり時間を潰そうと考えるのは自然な流れだった。

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