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最終章 共依存6
「……だってそれは、お互いを駄目にしちゃう――」
「俺はヒロのためならどうなっても構わない」
「そんなこと言わないでよ」
「お前こそ、どうして否定するようなこと言うんだ?」
「否定じゃない……僕は――」
僕は――。その先に続く言葉を、宏輝はなかなか口に出せなかった。こんなことを言ったら、きっと。
口ごもる宏輝に、将大は意地悪に微笑みかける。
「俺に嫌われるのが怖い?」
「……だって、僕、重い……」
ぐずぐずうじうじ考えていると、ふいに身体が持ち上がる。
「っつ、マサくん?」
「重くない」
将大は宏輝を身体の上に乗せる。宏輝が将大を組み敷くような形になり、宏輝は大いに戸惑った。
「重いって……っ」
「重くない。もっと、俺に寄りかかればいいから」
「……本当? 力抜いてもいいの?」
「いいよ」
将大の声に促され、宏輝は全身の力を抜く。耳を傾けると、将大の鼓動が、体温が、匂いが伝わってくる。
「ヒロはもっと俺を頼ればいい……」
将大が蠱惑的に誘う。その表情に、宏輝は思わずどきりとした。
「ヒロ……」
「ん……っ」
宏輝は誘われるがままに口を開き、将大の舌を受け入れる。
「俺たちは出会った頃からずっと、互いに寄り添って生きてきたじゃないか……。何を今さら遠慮することがある?」
「ごめん……」
「俺はヒロに頼られたほうが嬉しい」
「僕も……僕も、マサくんに頼ってほしい……僕の前では素直なマサくんでいてほしい……」
「素直な俺?」
「うん……そうだよ……」
「じゃあ、俺にも素直なお前を見せてほしい」
「わかった、約束する……だから」
宏輝は将大の鼻に手を伸ばし、指先でトンと突く。
くすぐったいような戯れに、ふたりしてくすくすと笑った。
「ねえ、マサくん。僕、今から、したい」
「……わかったよ、ヒロ。だけど――」
その後に続く言葉を、一生忘れることはないだろう。甘やかな雰囲気は将大の一言で、ことごとく砕け散った。
――俺がお前に触れるのは、これで最後だ……。
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