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22.バツなし三十路男、恋に堕ちる?【はじめの一~っ歩♥編】

「ルネッ〇~ンス!」  日曜の昼時、川の畔で缶酎ハイや缶ビールを掲げて乾杯する男三人衆。オレ他その友人の三人でBBQしているところだった。揃って独身貴族、彼女なしのオレたちは、この集まりを『貴族の会』と呼び、BBQを『貴族の遊び』と呼んでいる。会えば彼女できたか? 好きな奴ができたかなどの近況報告。あとは他愛もない話題で盛り上がる無邪気な仲間たち。 「そういえばなんかお前いつもよりおしゃれじゃね?」 「え、そう?」  友人師岡に言われてオレは戸惑う。その日はこの前例の店で買ったシャツを着ていた。 「なんかあった?」 「おばちゃんするどいっ」  友人大場(♂)に言い当てられて一瞬ドキッとしたが、おちゃらけて誤魔化そうとするオレ。大場が「おばちゃんじゃねえわ!」とツッコむのがお約束で、師岡がケラケラ笑っている。  内心オレは冷や冷やだった。中学の頃からの付き合いとはいえ、男にときめいちゃった~カッコハートマーク~な話はしないほうがいいだろう。ドン引きされて数少ない友人と疎遠になるのはいやだ。なのでこのことは黙っておくことにする。 「ほんとなんもねーなオレたち」 「平和で良いではござらんか」 「そうでござるな」 「武士かっ!」 「はははは!」  まさかこのオレが誰かにキュンキュンしてるなんて、口が裂けても言えないっっ……!  こうして夕方まで存分に酒を楽しんだ無邪気な貴族たちは、バスという公共の乗り物に乗って帰宅したのだった。  この三日前――木曜にオレはまたあの洋服屋に行っていた。  売ってる服はこの前来た時とほぼ変わらなかったが、それでも心が弾む。  あ、いたっ!? 店内であの人を発見したことに歓喜する。ライオンさん。  その日はラフな格好で普段着のようだった。でもおしゃれ。さらっと薄手のブルゾンを羽織ってるだけなのに、なんであんなにカッコよく見えるのか。この人なら抱かれてもいいかも……ちょっとそんなことを思ってにやけていると 「?」  “ライオンさん”がクスッとした。え、笑われた? 笑った? 「よく会いますね?」 「え?」 「この店よく来てる方ですよね?」 「あ、は、はい、よく来ます!」 「クスッ」  あ、笑われた? 「ここの服好きなんですか?」 「え? あ、は、はい好きです!」  ドギマギするオレを見てライオンさんがやさしそうな顔で微笑した。  か、かわいい~まぶしい~! キラキラキラキラ~。少女漫画に出てくるテニス部の憧れの先輩が笑った時白い歯がキラーンて光ってるみたいな爽やかさなんですけど~!? 爽やかすぎて眩しい ~!! しかもクールそうな見た目に反してよく笑うとこがなんかかわいいw 「かわいいですよね」と彼は呟いた。 「え? どこが? かっこいいじゃなくて?」  なんのことを言ったかわからずオレは困惑した。このメーカーにかわいいデザインの服も小物もない。いったいどれのこと言ったんだろう? とキョロキョロしているとライオンさんが切り出した。 「失礼ですが、お仕事の帰りですか?」 「え、ええ、まあ……」  オレは困惑して目を瞬かせた。 「喉乾きません?」 「?」 「よろしかったら一緒にお茶しませんか?」 「え?」 「上のカフェで」 「はいっ、オレなんかでよければぜひっ!」 「クスクス、かわいい……」  ん? かわいい? ってさっきも聞いたけど、もしかしてオレのこと? はははは、まさかまさか…… 「あはははは」 「はははは」  そんなわけでオレとライオンさんは、上のフロアにあるカフェでお茶することになった。 「へえ~、そうなんですか」  ライオンさん――本名『潮崎(しおざき)』さんと仕事のことをちょこっと話した。 「うちの会社の酒を出してるビアガーデンがあるんで、今度一緒に行きませんか?」  潮崎さんは飲料メーカーの営業をやってるらしく、とても話しやすい人だった。自然な笑顔の口元から零れる白い歯が眩しい!  「行きます行きます!」  オレは即快諾し、そのお誘いを受ける。よっしゃ! これで一歩前進っっ! 「ラインやってます?」 「あ、はい」 「アドレス交換しません?」  潮崎さんのほうからそう言ってくるとは思っていなかったオレは、少し困惑するも喜んでアドレスを交換したのだった。 つづくww

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