3 / 9
grow apart
「今日も行くのか?」
出勤の支度をする僕に、トースター待ちの栄 が問う。
「あぁ」
袖のボタンを留めながら僕は答える。
毎朝のルーティーンの様に、この会話を繰り返している。
「ふーん…」
栄は面白くなさそうに返事をこぼしながら、熱々のパンを指先で格闘しつつ摘んで皿に乗せていた。
「行ってくる」
結局今朝も栄と視線を合わせぬまま、僕は家を出てきてしまった。栄が不満なのは仕事に行くことではない。仕事を終えたあと、真っ直ぐに帰宅しないことが不満なのだ。
ともだちにシェアしよう!