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第3話穴掘りの顛末
木ノ下さん宅で目が覚める。狭いベッドで、尻尾を撫でて眠りについた木ノ下さんは、安らかに惰眠を貪っていた。
木ノ下さんとこういう間柄になってから、狐化をコントロールできるようになり、無意味に尻尾や耳が出なくなった。それには感謝している。
寝床を抜け、リビングにいるウサギの様子を見に行く。『ミルク』と名付けられた白いもふもふは俺が近付いても見向きもせずに餌を食べていた。
「お前は、俺が狐だと知っているのか?」
ちっとも可愛いと思えないミルクは、俺を一瞥した後、再び餌を食べ始めた。小動物に関しても、捕食への衝動が減った。
(あぁ……穴掘りしたいなぁ……小さいやつを沢山掘りたい……)
いつもの公園は、穴ばかりになってしまったため、少し遠い公園へ穴掘りに出掛けている。木ノ下さん家に近いその場所は、土が柔らかくて穴が掘りやすい。初夏の雨のような懐かしい香りのする土に一目惚れした。
「また穴掘りのことを考えてるだろ」
背後から木ノ下さんに捕まった。起き抜けの、くぐもった声が耳元をかすめる。
「えっ、なんで?」
「ほら、手が動いてる。それに狛崎が狐の行動に出る時は大体髪が逆立つ。俺もただ尻尾を愛でている訳ではないんだよ。飯食ったら穴掘りに行くか」
「昼間はダメです。人目に付くから」
俺の隠れた趣味は全てこの人にバレている。
「じゃあ、それまで何しよう」
「特に。公園は1人で行ってくるので、お構いなく」
「そつないなぁ……」
木ノ下さんが後ろからぎゅっと抱きしめた。尻尾を狙われるかと、思わず引いた股の間に膝を入れられる。
あり得ないくらい密着した木ノ下さんは、俺の耳元で囁いた。
「俺さ、狛崎ともっと仲良くしたいの。もっと打ち解けて欲しい」
「これ以上、仲良くしてどうするんですか」
「……セックス、したい」
「……………………な、な、な、何を言ってるんですか!!セッセッセックスって……はしたない!!」
「声裏返ってんぞ」
後ろから羽交い締めされて言われる台詞ではない。俺は木ノ下さんの元から抜け出そうと、ジタバタ慌てた。
「その様子だとするつもりないよな」
「しませんっっ」
木ノ下さんとは、挿れたり出したりする行為をしていない。
いつも寸前のことをやっていたら気になる訳で、具体的に何をやるかは調べた。そのうちあるかもしれないとは思っていたが、ハッキリ言葉にされると戸惑う。
木ノ下さんと俺の関係は付き合っているとは違う気がする。
木ノ下さんに『性的な目』で見られていたことが何とも恥ずかしかった。
セックスは好きな者同士がすることだ。少なくとも俺は。
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