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第6話穴掘りの顛末
雨が本降りになってきた。右手に傘、左手に俺を抱えた木ノ下さんは、ずぶ濡れになりながら黙って帰り道を急ぐ。
もしかしたら後をつけられているかもしれないと、一抹の不安が過る。狐一族の正体が記者にバレたら大変なことになる。太古から守ってきた大切な仲間と家族を、俺の失態で無くすなんて考えられなかった。
力の抜けた四肢が、木ノ下さん宅の玄関に投げ出される。
俺はとにかく泣くしかなかった。後から後から涙が溢れて止まらない。
雨で濡れた身体が冷たくなるのとは逆に、号泣したせいで頭は上気していく。
小一時間、泣いていた。どうにもならないとは分かっていても、泣くしかなかった。しかし、涙で罪悪感を拭うことは出来なかった。
「おい、ピーピーピーピー泣くな。近所迷惑だ。いい加減泣き止め」
木ノ下さんが、俺にタオルを投げる。
「だって……おでのせいで、ひくっ、みんなに迷惑がっ……」
「泣いてるところ申し訳ないが、迷惑どころのレベルじゃないと思うぞ。それこそ狐人間が絶滅するくらいの危機だろう」
「…………分かってます」
傷口に塩を塗るような木ノ下さんの言葉は動揺している俺の心へ確実に響き、冷静へ引き戻される。
「今お前がすべきことは、これからどうするかを考えることだ。場合によっては、狐側にも真実を告げなければならない。たとえ糾弾されても、狐人間を守るためには仕方ないだろう」
「…………」
「取り敢えず風呂へ入ってこい。話はそれからだ」
「あ、あのっ」
「なんだ?」
既に着替え済みの木ノ下さんは腕を組み、座り込む俺を見下ろしている。
「色々、すみません。木ノ下さんまで巻き込んで」
「俺はある意味自業自得だから、気にすんな」
再度『風呂へ入れ』と促される。肩を落とした俺は、とぼとぼと風呂場へ向かった。
腿に張り付いたジーンズは思いの外重く、まるで俺の気持ちみたいだと自嘲気味に笑っても、前向きにはなれなかった。
温かいお湯に入り、自分は冷えきってきたのだと気付く。血液が巡り始め、視界が鮮明になってきた。
『今お前がすべきことは、これからどうするかを考えることだ』
木ノ下さんの言葉を噛み締めながら、ゆっくりと目を閉じた。
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