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第19話 裏側から

「名前と歳」 「…………??何??」 「お前は聞かれたことだけ答えろ」 赤髪が椅子を蹴ろうとしたため、俺は慌てる。 「こ、こま崎、まな、とです。としは、24歳……」 赤髪は俺の前で仁王立ちしている。威圧的で不愉快だ。何されるか分からない不安の方が大きい。 「お前が犯した罪は何か分かるか」 「……………………」 心当たりがありすぎて、どこからが罪か分からない。木ノ下さんに狐だとバレた辺りだろうか、それとも雑誌記者に写真を撮られた辺りか。 「か、会社の……先輩に、狐がバレました。ウサギが、ウサギで……」 「違う。そこじゃない」 「へっ」 「お前の最初の罪は新幹線の中だ。尻尾を出しただろ。あそこからだ」 「ひぃっっ」 発する言葉が無くなり、喉が鳴った。何故新幹線の事実を知っているのか。赤髪は更に続ける。 「そこから全てが狂った。人間に狐がバレて、写真も撮られた。人間風に言えば、身から出た錆だ。感情の起伏で狐化する奴は、粋がって人間社会で働くべきではない。お前はもう終わりだ」 『お前は終わりだ』と、ハッキリと口にされ、頭が真っ白になった。 この人は、自らを狐老会だと名乗った。何より、俺を待ち伏せしていた。透視をする赤い髪の狐老会に俺は心底怖くなる。 彼の鋭い眼光に魂が射貫かれそうだ。 「狐写真がもうすぐ世に出る。世間に狐の存在が知れて、阿鼻叫喚になるだろう」 「あ、び……きょ……??」 「地獄だよ。お前の家族も、狐一族も、息絶えるまで人間に追いかけ回される。皮を剥ぎ、血の成分から、脳の中身、骨、遺伝子まで研究に使われる。女狐は無理やり子供を産まされる道具となり、偶然にして生かされたひと握りの奴は、死ぬまで檻で過ごす。狐の自由は無い。それだけのことをお前はやったんだよ。分かるか」 「!!!!!!!!!!!」 自分の家族や狐一族に、迷惑が掛かるのは予想していた。それは一時的なもので、そのうち元に戻るだろうと思っていた。 俺の考えは浅はかだったのか。 「ふざけんな。知らなかったみたいな顔が腹立つ。お前が自首したところで、状況は変わらないんだよ。軽率な行動が罪も無い人を殺すんだ。殺人と同じだ!人殺し!!」 赤髪が、怒りに任せ思いっきり壁を叩いた。ミシミシと音を立てた扉がしなる。 赤髪は、浅はかな俺に対し、ものすごく怒っていた。 「す、すみません…………本当に……ごめんなさい…………ごめ、ん、なさい」 「謝っても何もならない。今すぐお前の命を差し出せ。死をもって償え」 「………………」 無言で小刀を差し出された。重量感のある小刀は、柄の部分に細かな装飾が施されている。 「……………………」 死をもって償えば、みんなが救われるのか。 狐一族を俺は守りたい。もう、躊躇いはなかった。 喉にひんやりとした刃の部分を当てる。大きく息を吸い手に力を入れた、その時だった。 「ちょ、紅緒、やりすぎだって。本当に死んじゃうじゃないか!!大丈夫??死ぬ必要なんかないよ。あああ、血が出てる。止血しなくては」 気配も無く、突然俺の隣に人が現れた。

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