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第21話 裏側から
「木ノ下優希。27歳。君が勤めていた会社のトップ営業マンで、妻子無し。君のことを脅して狐を利用としていると密告があったが、実の所は違うよね」
「同意の上です」
『密告』は恐らく桃矢だ。だって木ノ下さんとのことは、桃矢しか知らない。あれ程内緒にしていたにも関わらず、色んな人が知っている関係だったことに驚愕した。
「君と木ノ下氏の関係については言及しない。恋愛は個人の自由だからね。ただ、今後は木ノ下氏と関わらないで欲しい」
「え……っと…………」
「会社は辞めてもらう。君はほとぼりが冷めるまで、狐老会の支配下で監視する」
「………………………」
太ももに乗せていた手をぎゅっと握った。分かっていたことだが、自らの行動の落とし前とは言え、言葉にされると辛いものがある。
ぽたぽたと涙が落ち、手の甲を濡らした。
「自らの行いを反省しなさい。君の後ろには沢山の仲間達がいることを忘れてはならない」
「すみませんでした……」
「ゆっくり考えてから、今後を判断しましょう。申し訳ないが、二度と人間社会へ復帰することはできないよ。それは忘れないで」
「……………………はい」
「君は、自身の判断でここへ来たと思うけど、遅かれ早かれ我々が身柄を拘束しに行ったので、そこのところはあまり悩まないように」
七瀬さんが俺の頭を撫でる。
「木ノ下氏に救われた命を大切にしなさい」
「……うぐっ……ぐず…………うん」
俺は木ノ下さんに助けられていたのだ。木ノ下さんは知らないフリをして全てを知っていた。あの人は、本当にお人好しだ。
(木ノ下さん……木ノ下さん、ごめんなさい。ごめんなさい)
満足なお別れも出来ず人間社会から切り離された。暫くここで暮らすことになる。
こうして俺は、志半ばにして会社を退職し、元いた家も引っ越すことになった。退職処理と引っ越しの手続きは、七瀬さん達が全部やってくれたらしい。トラブルメーカーの問題児扱いされているようで、外へ出ることは一切禁止された。
狐は、とうとう1人になってしまった。
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