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第24話ニューワールド
「…………この通り。見逃してくれ」
山根は想像通り暴れたあと、頭を垂れて懇願した。だが、逃げようとする山根を、星野が後ろから取り押さえる。
チャラい星野は武道にも長けており、山根程度の狐なら簡単に身動きを封じることができた。
「遅いです。後は狐老会が決めます」
「おじさん、痴漢は良くないよ。このまま行けば警察に捕まるって」
手首と足首を紐で結ばれた山根は、打ち上げられた魚のようにバタバタと再び暴れ始めた。
「証拠はあるのか。俺がやったっていうっ。お前らこの俺を誰だと思ってるんだ!!バカ野郎!!」
「誰って、ただの変態じゃん」
「だね」
俺と星野は顔を見合わせた。
こうやって自分の非を認めない往生際の悪い狐は時々いる。開き直りも甚だしい。
「後で偉い人から説明してもらいます。あなたは人間社会には戻れません。明日からは狐として生きてください」
「おじさん、ざんねーん。せいぜい頑張って」
「………………クソ狐どもが」
罪を犯した狐は、運ぶだけになった時点で応援を呼ぶ。強制的に紐でぐるぐる巻きをした焼豚のような山根はとても哀れに見えた。
間もなく回収部隊が現れる。簡単な引き継ぎ後、焼豚を運ぶべく持ち上げた瞬間だった。
星野が先に部屋を出たのを見計らい、山根が渾身の力を振り絞ったのだ。回収部隊の1人を思いっきり噛んだのである。
「っっっ痛えっ…………」
「………………っ、取り押さえろ……!!」
「え、えええっっっ」
「狛崎さんっ」
焼豚は狐化し、開け放った2階の窓から逃亡した。
すっかり日は沈んでいる。真っ暗闇へ、まるまると太った狐が消えていった。
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