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第37話狐には分かるまい

「他のやつに触らせたか?」 「触る狐なんかいません」 狐だからみんな同じ尻尾が付いている。互いのものを敢えて触ることなんかしない。 色恋に無縁だったし、俺の身体に興味があるのは後にも先にも木ノ下さんだけで、心配無用である。 「ちょっ……とストップ」 不服そうな木ノ下さんがまさぐる手を止めた。 「久しぶりで、慣れてなくて……ぁっ、尻尾が出るか、分かりません」 「こっち来い」 ベランダから、室内へ手を引かれる。いくつもある部屋のうち、一番奥にある扉を開けた。 大きなベッドが真ん中に置いてある寝室は、黒を基調とした、いかにも木ノ下さんらしい造りになっている。 部屋に入るなり、軽くキスをされた。かなり久しぶりの木ノ下さんとのキスは、俺を動揺させるには充分だ。 心臓は取り出したいほど五月蝿いのに、頭はぽーっと熱い。 「ん、はぁっ…………ぁ、ぁ、」 口付けは、徐々に深く、動物的なものになっていく。キスがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。ずっとこうしていたいくらい、舌が心地が良い。 「どうしようか。狛崎が嫌ならやめる」 木ノ下さんが耳元で囁いた。 ずるい。木ノ下さんは果てしなくずるい。 キスを受け入れている時点で俺の気持ちは決まっている。自らの選択に覚悟を持たせるため聞いているのだ。 (もう狐には戻らない。俺は人間として、この人と生きていく。疎まれようが嫌われようが、離れてやらない) 俺は意を決した。 「全然。俺……木ノ下さんが……好きです。会いたくて、会いたくてたまらなくて、強引でしたけど、迎えに来てくれて嬉しかった」 言ってる最中、ちょっと泣きそうになる。鼻声になりかけた俺は、誤魔化すために肩をすくめた。涙なんて、らしくない。 「お前、会わないうちに可愛くなったな」 「俺は元から可愛いです。なんせ、狐ですから」 「ああ。狐は可愛い。本当に……」 優しいキスと共に、ベッドへ押し倒された。 木ノ下さんがスウェットの中に手を突っ込み、胸へ手を這わす。小さな突起をきゅ、と引っ張ったり、押したりするものだから、むず痒い感覚に都度身体が動いてしまう。 「……あ……んっ……」 意識に反して声が出てしまった。 木ノ下さんは小さく微笑み、俺の頭を片方の手で撫で始めた。いいこ、いいこと言われているような、甘い気分になる。 「胸、気持ちよさそうだな」 「……そんなこと、ない……ぁう、あ……」 「ほら、触るとピクンってなる」 今度は舌で転がした後、思いっきり吸われた。舌の生暖かさに、敏感な乳首か痺れるようだ。焦れったい動きに身をよじる。 「あ、ぁ………あ、ふぅ、あ、あ……ん……」 なんで乳首がこんなに気持ちいんだろう。別のものになったみたいに、俺の快楽回路に繋がっている。 蕩けた俺の狐が、お尻の上からもぞもぞと動き始めた。 「き、き、の下さん、しっぽ、でそう……ん……うわぁ、、」 ガッとパンツごとズボンを下げられた。恥ずかしいとか言っている暇も無く、自分でも久しぶりに見る尻尾がふわふわと揺れた。

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