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第39話狐には分かるまい
冗談じゃない。イキたいのに、イかせてもらえないんて!!
「え、イきたいっ、なんで、なんで?」
「……………………」
木ノ下さんは黙って腰を動かしている。俺の片手はしっかりと根元を固定していて、逃げ場の無い刺激に目がチカチカしてくる。
自ら手を離せばよかったのに、木ノ下さんには逆らえなかった。彼によって与えられている快楽は、彼が全てを決める。
我慢しなくちゃ、と俺は射精という生理現象を必死で堪えた。
涙で顔がグチャグチャになる。でも目の前の木ノ下さんは涼しい表情だ。
「イきたい……?」
俺は何度も何度も頷く。心を込めて木ノ下さんに目で懇願した。
「どうしようかな」
「……おねがい……します……」
せり上がってくるものは、逃しても逃しても太ももから上がろうとする。
じっとりと暫しの間、見つめあった。
「イっていいよ」
少しして、木ノ下さんの許しが出る。
俺は震えながら自分の手を緩めた。
「ぁぁ、あ……ぁ、ん……ぁあああ……」
ピュッと出た精液が俺の胸に飛び、残りはたらたらと溢れるように流れる。開放感で全身が弛緩した。ものすごく気持ちがいい。
木ノ下さんが脱力して横たわる俺の頬を指の背で撫でた。
「気持ちよかったか」
「………………は、い……」
「休んでろ。風呂入ってくるわ」
ちょっと待って。木ノ下さんはまだイッてない。俺ばっかり気持ちよくなってる。
俺は咄嗟に、風呂場へ行こうとする木ノ下さんの手を掴んだ。その拍子に、狐姿のままシーツに足を取られて床へ落ちる。
「痛った…………木ノ下さん、まだですよね」
視線が目の前の大きなモノを追う。天を向いたそれは、どちらのものか分からない汁でテラテラと輝いていた。
「別にいいよ」
「よくないですっ」
木ノ下さんが笑いながら俺を見る。
「お前がどうにかしてくれんの?」
「え、あ、ど、どうしたら、気持ちよくなりますか。俺の後ろは使えませんか?」
男同士の行為について調べたことはある。どこを使うかぐらいは俺でも知っていた。けど、あんな大きなモノが俺の尻に入るとは到底思えなかった。『ほぐし』とやらが必要である。
「もう疲れてるだろ。続きは次回やろう」
「じっ次回…………?」
「お前は今日からここに俺と住む。時間はいっぱいあるから、焦らなくても、じっくりゆっくり開発させてもらうよ。毛並みも気になるし」
「…………は、はあ」
ずいと木ノ下さんが寄ってきた。
近くでも耐えうる格好良さと、互いが裸であることに、羞恥心で埋まりそうになる。
やっぱり木ノ下さんは木ノ下さんであり、それ以上もそれ以下もない。俺にとって木ノ下さんは絶対無二の存在だ。
「こういうのを『狐の嫁入り』って言うんだっけか?まあ、狐の嫁には間違いないだろう」
「違います。あれは…………ふぅ、っ……」
突然唇を奪われる。
『天気雨の成れの果て』です、と真面目に返そうとしていた。ああ、彼が言いたかったのは自分が『嫁』なんだと、木ノ下さんが風呂場へ消えてから気付いたのであった。
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