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2018年9月26日-2
「……アンタ、顔いじってたりすんの?」
「ん? いじってないよ」
純粋な疑問を口にすれば、「そんな馬鹿な」と言わんばかりに男はカラカラと笑った。「昔からずっとこの顔だ。気になるなら子どもの頃の写真、見せようか?」
「いや、いい」
「残念。……でも、そう訊いてくるってことは、顔がいいって思ってくれてる?」
頬杖をつき、ゆるりと微笑んだ彼は、情事の名残を混ぜ込んだ掠れ声で嬉しそうに訊ねてくる。岳もにやりと笑い、右手を伸ばす。
「顔だけじゃない」
そう言って男の胸板に手を這わせれば、彼はひくりと裸体を強ばらせ、上擦った声を小さく洩らした。元からなのか、それともまだ余韻に浸っているのか、淡い愛撫にさえ敏感に反応する様子に、一度はおとなしくなった劣情が再び湧きあがるのを感じた。
「アンタの身体、すげぇエロいよな」
「……ん、っ……」
手のひらに吸いついてくる筋肉の感触に、うっとりとした言葉が出てくる。なだらかに隆起する胸筋を撫で、それからくっきりと6つに割れた腹筋に触れていく。それは分厚い弾力があり、肌触りがとても良く、意図して妖しく撫でれば、ぴくっと締まり硬くなった。
おもむろに視線をあげれば、男は恍惚とした表情をうっすらと浮かべ、いきれた瞳で岳をぼうっと見つめている。
鍛えられた男らしい肉体とは対照的に、端整な顔や洩れ出る中低音の声からは、香水のような色気が薫ってくる。ふわりと散漫したそれを浴びてしまえば最後、惑ってしまう。
岳は男にぬるりと顔を寄せると、半開きになっていた彼の唇にしゃぶりついた。男も性急に舌を伸ばし、岳のものにねっとりと絡んでくる。ほのかに甘い唾液と、じっとりと蒸れた吐息、さざ波のような快楽を移し合うような口づけに、しばらくの間、夢中になった。
「……何かスポーツでもやってんの?」
唇を離し、糸のように伸びる唾液をそのままに、男の黒々とした下生えを軽く撫で、半勃ちのペニスをやんわりと握る。相手は腰をひくつかせ、表情を蠱惑的に歪めた。
「……小学校から大学まで水泳やってた。今も週一でジムで泳いで……ん……ッ」
なるほど。通りで均整のとれた体型をしているわけだ。改めて男の裸を隅々まで眺める。肩幅はがっちりと広く、胸筋はしっかりと発達している一方で、腰回りや脚は引き締まって細い。型通りの逆三角形の肉体美だった。
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