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2018年9月26日-3
「何が専門?」
「フリーだな」
「凄かったのか?」
「いや、全然……、上を狙えるほどの素質はなかった」
男の身体を反転させ、四つん這いにさせると、熱と質量が増した屹立を、柔らかいままの窄まりに埋めていく。みちみちと肉塊を抉るような音を響かせ、ふたりの身体は再び繋がった。
「あぁっ……ん、……ッ」
「こっちの素質はすげーあるっぽいけど」
「はは……、そうかも……あっ、ァ……!」
根元まで挿入し、間髪いれずに腰を揺すり始めれば、男は甘ったるい声で喘ぎながら、筋肉がしなやかに張った背を婉然とくねらせた。彼のなかはとても具合が良く、頭の芯から蕩けてしまいそうなほどに気持ちがいい……。
「……あ、ァ……、きもち、い……もっと、突いて……っ」
「……ッ……!」
半ば発情期の獣のごとく、岳は夢中になって魅惑の肢体を貪る。晒された白い頸にかぶりつけば、フレグランスを吹きかけているのだろう、柑橘系の爽やかな香りが口腔を漂い、脳髄がぐらりと揺れた。
1時間後、「もう少し休んでから帰る」と言ってベッドに寝転がった男と別れ、ひとりでラブホテルを出た。
雨はやんでいたが、建物やアスファルトはびっしょりと濡れている。歩くうちに、黒のカジュアルシューズが足先から湿っていき、汚れていった。
帰ったらタオルで汚れを取り、乾かさなければ生地が傷んでしまうだろうが、面倒くさいので多分やらない。自分は、そういう人間だ。
部屋を出る前に喫した煙草の臭いが、カーキ色のスエードタッチシャツに染みついていた。それを絡め取るように、侘しい秋の夜風が向かう先から吹いてくる。夜が更けてきて、ますます肌寒さを感じた。
飲んだくれたサラリーマンや、夜はまだまだこれからだと言わんばかりに騒いでいる大学生、ケバい女を連れたホストのような男に、アダルトショップの看板を手に突っ立っている冴えない中年男性。そんな輩がうようよといるJR渋谷駅までの道のりを、岳はいささか冷めた思いで突っ切っていく。
それぞれの人間にそれぞれの夜があれど、いったいどれだけの奴が実りのない虚しい時を過ごしていることだろう。のちに振り返り、今夜の出来事を鮮明に覚えている奴は、この中の何人くらいだろう。
少なくとも岳は、先ほど一緒にいた男について、一週間もすればほとんど忘れてしまうだろうと思っていた。いずれどこかで再会しない限り、彼の顔や声、感触を思い出さないに違いない。
どれだけ濃密で法悦とする時間を過ごしたところで、これまでと同様、頭の中から悉く消えていくだろう。
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