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2018年9月26日-4
女にしろ男にしろ、ベッドを共にした相手とは一夜限りですっぱりと関係を終わらせる。それが常だった。
その行為に情が伴ったことは一度もない。伴いたいとも思わなかった。
どちらかというと淡泊な性格だと自覚はしている。
けれどもそれが、主たる理由ではない。
そんなものを得て、いったい何になる。
どうしようもないほどに怯え、苦しみ、自縛していくのが目に見えている。
だから、他人とは必ず一線を引いた上で関わりを持ち、断ってきたのだ。
空疎な喧騒を縫いながら、岳はチノパンのポケットに手を入れ、取り出したそれを無関心に眺める。
それから、先ほどのやり取りをぼんやりと思い出した。
2回目の情事を終え、シャワーを浴びて部屋に戻ると、男はベッドの上で胡座をかき、自販機で買ったらしいスポーツドリンクを飲んでいた。
安っぽくて薄っぺらいガウンだけを羽織り、大事なところは晒されたままだった。出すものをすべて出しきり、皮を被って力なく垂れていた。
萎えていてもそれなりに大きいが、子供のようなペニスだと思った。大人っぽいのに幼い。そのちぐはぐさが、そこはかとなく卑猥だった。
「ーー……もし、君さえ良ければ、また会ってくれる?」
濡れた髪をバスタオルで拭きながらベッドに腰をおろすと、爽やかさと艶やかさを綯い交ぜにした笑顔を向けられ、そう言われた。
「気が向いた時でいいからさ。また、俺のこと抱いてよ」
指先で胸元の中心線をなぞられるような声に、ぞくぞくとした。元よりやや低めのすっきりとした声質で、耳の中に淀みなく入ってくるため、尚更だった。
彼の声に聴覚が犯される。鼓膜が性感帯となり、快楽に震え、連動するように頭の奥からぼうっと熱が生じる。思考が茹っていき、何も考えられなくなる。最中はずっとそんな感じだった。
それはそれとして。これまでも色んな相手から、幾度となく同じことを言われてきた。今夜もまた、そうだった。
岳はいつものように、興ざめた。目つきは悪いが、見た目は良い方だと思う。背は180センチを超えており、鳶職人という職業柄、筋肉質な体格だ。それに、セックスには慣れている。そういった部分に惹かれてなのか、2回目以降を望まれることが多かった。
けれども、こちらにそんな気はいっさいない。だから、至極面倒に思ってしまう。
「アンタとは、これっきりだ」
そう答え、ベッドの下に脱ぎ散らかした服を拾って着ていく。男はスポーツドリンクを飲み干すと、ガウンが肩からずり落ちたのを気にすることなく、ベッドサイドに置いたショルダーバッグに手を伸ばした。
「これっきりなら、それでもいいよ。でも、連絡先くらいは渡してもいいだろ?」
何か書けるものあったっけな、と独りごちながら、男はバッグの中をガサゴソと漁り始めた。その様子を横目に岳は服を着終えると、百円ライターで煙草を炙り、ゆっくりと吹かした。
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