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2018年10月20-1

 取引先の病院で思わぬ再会を果たした青年と爛れた関係を築いて、2週間ほどが経った。  時の経過が早いように感じるのは、これまでの日常に変化が加わったからだろう。いつかのタイミングでカレンダーを見た時には驚いたものだ。ついこの前、10月になったばかりだと思っていたら、もう下旬に差しかかろうとしているのだから。  10月20日、土曜日。今夜は相手が暮らす駒込のマンションで、行為に耽っていた。明日は二人とも休みだからと、何度も何度も。  相手が体内から抜け出てからも、しばらくの間、濃密な陶酔に浸っていた。皆川 千景はベッドの中で汗ばんだ身体を丸め、千切れた嬌声を混ぜた荒い呼吸を繰り返す。指一本動かすことすら億劫なまでに、疲れきっていた。  なのに、下半身……主に性器を受け容れていた場所がいまだに熱く疼いている。その中には、寂しいような切ないような、物足りないような、そういった感情が孕んでいた。ひとり遊びに興じている時とは比べ物にならないほどの強い感覚だった。  セックスがこんなにも気持ち良く、ハマってしまうものだとは思わなかった。  やがて千景は、昂りが(しず)まった裸体を孵化(ふか)した蝶のように広げると、ごろんと寝返りを打ち、同じく裸のまま上半身を起こし、煙草を燻らせている青年ーー久我 岳をぼうっと見上げた。  彼とはこれで、初めての夜を合わせて四度目の接触となった。  会ってすることと言えばひとつだけだが、飽きもせずに岳は連絡をくれる。ホテルは金がかかるからと、岳の部屋か、吉祥寺駅が最寄りの千景の自宅マンションで戯れ、終電までに帰る。それを繰り返していた。  今のところ、致命的なボロは出していない。経験豊富で、性に奔放なネコを演じられている。  本当は経験が浅く、こういった不埒な遊びには不慣れだとバレていない。……はずだ。  懸念点があるとすれば、フェラチオが下手なことくらいか。これまで、数えるほどしかしたことがなかった。それを悟られまいと、千景は積極的に岳の大きな一物を口や舌で愛でていたが、果たして彼にどう思われているのか。少し、怖かったりする。  対する岳は、見栄をはっている自分とは違い、正真正銘のプレイボーイなのだろう。野生的な美丈夫で、女にも男にもモテるはずだ。  初めて出会った渋谷のゲイバーで岳に声をかけられた時、飾らず、上っ面の言葉をかけてくるわけでもなかったが、遊び慣れていそうだと思った。その印象は今でも変わらない。現にベッドの中だと、彼の意のままに翻弄され、ふしだらな男のふりをせずとも勝手にそうなってしまう。  ……事を終え、ひとりになった時に、顔から火を噴いてしまいそうなほどに恥ずかしくなるが、岳を悦ばせせられているのなら、良しとしたい。

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