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2018年10月20-3

「そういうアンタはどうなんだ?」 「……ん?」 「アンタこそ相手に困らなさそうだけど、何で俺と会ってくれんだ?」  深い意味はなく、流れでなんとなく訊いてみたという感じだった。  それは、こういうことが初めてで、引き際が分からなくなっているだけだ。他に理由はなかった。  あの夜、岳に声をかけられ、顔や身体を気に入ってもらえて、少しだけ自信がついた。どうせ、これっきりだろうと思いながらも連絡先を教え、案の定連絡がこなかったので、千景としても終わったことにしていた。……いや、そもそも何も始まっていなかったのだろうが。  それが後日、取引先である代々木の病院で岳を見かけ、躊躇いながらも勇気を出して声をかけたことで、彼は連絡をくれるようになった。  それが良かったのか、悪かったのか。一度目の誘いを「こういう経験は、積んでおいた方がいいかも知れない」という浅慮のもとに二つ返事して以来、それが当然の流れになりつつあり、こちらからは今更、関係を断ちづらかった。  けれども、そんなことは絶対に言えない。疲れて頭が働かないながらも、千景は必死に理由を考える。 「……君の、これが気に入ったからかな?」  もっと上手い回答があっただろうが、これが限界だった。そう言って不敵に笑い、緩く勃ちあがった岳のそれを、指でつついた。 「大きくて、元気で……、嫌なことが吹っ飛ぶくらい、気持ちよくしてくれるから……」  ……顔が引き攣っていないだろうか。  内心ハラハラしながら、岳を見つめる。すると岳は、愉しげな含み笑いを浮かべ、おもむろに千景を組み敷いてきた。 「アンタとなら、気楽にやっていけそうだ」  男の色気を醸し出した低い声に、身体の芯がぞくぞくと震えた。今度は無理やり作った笑みではなく、自然と口角が上がった。  千景は岳の背中に腕を回し、彼の身体を引き寄せると、耳元に唇を寄せた。 「じゃあ……もう一回だけ、気楽なことしよう?」  ……ひょっとして、俺が上手く演じられているんじゃなくて、この子が鈍感なだけなのかも知れない。  岳にもう一度抱かれながら、そんなことをぼんやりと考えてみる。  そうだったとしても、罪悪感がチクチクと胸に刺さるのに変わりはない。むしろ、その痛みは増したように思う。  けれども今はそれを忘れて、ただただ善がっていたかった。

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