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2018年12月2日-1
翌週の日曜日。流石に冬物のアウターを着ないと外に出られない気候になってきた。
薄灰色の雲が、冬空を一面覆っていた。せっかく岳と飲みに行くのに、天気がそれほど良くないのは残念だが、仕方ない。昨日、ジムで泳いだ後にショッピングモールに寄り、お気に入りの店で買った服を着て、正午過ぎ、千景はJR代官山駅前で岳と落ち合った。
若者や外国人、生活水準が高そうなお洒落な人々の往来に混ざり、まずは同期が話題にしていたクラフトビール専門店に、岳を連れて行った。それから、ネットで評判が良かったワインバーやスペインバルをハシゴしながら雑談を交わした。
これからがシーズンとなるスノーボードに関して、岳が心なしかウキウキしながら話すのを、微笑みを以って傾聴しつつ、やはり自分は彼が好きなのだと改めて感じた。
初めて関係を持ったあの夜にはまだ、岳は千景に心を開いていなかった。こなれた感じで千景を誘い、蕩けるほどの行為に引きずり込んだが、そのひと時を愉しんだら、後はどうでもいいといった様子だった。代々木の病院で邂逅し、どうしてかこちらに食指を動かしていなければ、彼はきっと、千景のことを忘れ去っていったに違いない。
酒を飲み、煙草を吸いながら会話を楽しむなど、有り得ないはずだった。
そう思うと、胸が暖かく満たされると同時に、虚しく締めつけられる。矛盾する感覚に、千景は少なからず戸惑った。
……久我くんの胸のうちが見えない。
彼はどうして、食事や映画に誘ってくるのか。
3週間前の贖罪にしては過剰だと思う。前の男との件で非常に疑り深く、慎重になっているが、千景は決して鈍感ではなかった。
いや、しかし、それならなぜ口説かれない? なぜ毎度、他愛のない話で盛り上がるだけで終わってしまう? こちらからの誘いを、なぜ岳はかわしてくる?
……ただの友人になりたいのだろうか?
だったらどうして、時折あんな眼差しを向けてくるのだろう。
まっすぐで、熱くて、けれどもどこか怯えたような……。
その視線も、千景には解釈しがたかった。そうして、何もかもが分からなくなってきた。
……あまり考えないようにしよう。いつも通り自分は、経験豊富な男として、現実と虚構を織り交ぜた話で、岳を楽しませればいい。そう思った。
MR、というより営業マンで良かった。仕事を通して話術を磨いてきたのが、存分に活きていた。
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