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2018年12月16日-3
何も考えずにいようと意識すればするほど、頭に雑念が生まれてしまうものだ。
25メートルプールを、何往復しただろうか。疲れもあってかリズムが乱れ、泳ぎが苦しくなった。タッチ板に手が触れたところで、千景は泳ぐのをやめた。コースロープにもたれかかり、乱れた呼吸を整えながらゴーグルを外す。クリアになった視界と耳に、老若男女の姿と彼らの声が飛び込んできて、一気に賑やかになった。
……あれから2週間。まだ、それだけの日数しか経っていない。
岳のことを忘れられないでいて、当然なのかも知れない。
彼への想いを断ち切れず、彼のことばかり考え、仕事も私生活の活動も、いまいち身が入らないでいる。これではいけないと思い、頭から追い出そうとしても、気づけば彼に思いを巡らせてしまっている。
連動するように、胸が潰れそうなほどに苦しくなる。
それだけ、岳への思慕が強く、鮮明だったのだろう。
岳の心傷を知った時から、そばで彼を支えていたいと、強く願うようになった。
けれどもそれは、セックスフレンドである自分の役目ではなかった。
最初から分かっていたことだ。それを承知で、彼との爛れた関係を続けると決めたはずだ。なのに自分は、勝手に深く傷ついて、情けないほどに号泣して、馬鹿みたいだった。
岳が誰を好きになり、求めようとも自由だ。
きっと彼の傷に気づき、理解し、それに寄り添ってくれる優しい相手を見つけたのだろう。喜ばしいことだし、祝福すべきだった。
……時間はかかるだろうが、いつかはそう思える日がくるに違いない。
今は無理でも、きっと……。
呼吸が落ち着いてきたところで、千景は仰向けに身体を浮かせた。プカプカとゆっくり揺れながら白い天井をぼうっと見上げ、やがて静かに水中に沈んでいった。
目を閉ざしているので暗闇しか見えず、ごろごろとこもった音ばかりが聞こえる中、鬱屈とした心身は、海の藻屑のようにただただ揺蕩っていた。
1時間後、千景はプールを出て、男子更衣室内にあるシャワールームへと向かった。
熱めのシャワーを浴びた後、服に着替え、ロッカーに預けた荷物を取り出して、受付に向かった。
更衣室のロッカーキーを返却してから、近くの長椅子に腰をおろし、自動販売機で買ったスポーツドリンクを飲み始めた。運動後の心地よい疲労が溜まった身体の隅々にまで、清涼感が広がっていくようだった。
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