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2018年12月24日-8

「……岳はさっきも言ったように、皆川くんと腹を割って話せ」  恩師であり、法的な繋がりはないが家族だと言える貴久の言葉は、厳しくもあり優しくもあった。 「皆川くんは、お前を受け容れてくれる。大丈夫だ」  途端に胸がざわつき、全身がぐっと強ばった。  まさかとは思っていたが、もしかして……。岳はゆらりと千景に視線を向けた。 「聞いたのか」  千景は、ぎこちなくあごを引いた。その瞬間、ざわつきは酷くなり、目の前が真っ暗になりかけた。  気づけば、大きな舌打ちが出ていた。次いで、腹底から噴出した狼狽と怒りが、声や言葉となって貴久たちを攻めた。 「勝手なことばかりしやがって!」 「そうだな、勝手だと思う。けど、あの件を隠したまま皆川くんをこの家に招くことは、俺たちにはできなかった」  貴久がそう言うと、優一も無言で頷いた。 「お前も皆川くんも臆病だ。ちょっとしたことで、すぐに逃げ出そうとする」  先ほどのことを貴久にチクリと指摘され、千景は面目なさそうに俯いた。その様子を横目で見ながら、貴久は言葉を続ける。 「けど、皆川くんは親父さんのことを知った上で、お前と会いたいと言って今日、ここに来てくれたんだ。その覚悟を、お前は踏みにじれるのか?」  腹のあたりがまたぞろ、カッと熱くなったが、それを抑えつけるかのように、岳は唇をきつく噛んだ。  反論に窮していた。  お節介な身内はこれだから鬱陶しくて、腹立たしい。誰もこんなこと頼んでいないと言うのに。こちらの意思など、まるで度外視だ。  けれども、そんな彼らのお陰でもう一度、千景と向き合う機会を与えられたのも確かだった。  ……札付きだった10年前は、貴久や優一の言うことに、いちいち反発してばかりだった。  正論をぶつけられては、屁理屈にすらならない青臭い暴言で対抗し、最初から悪かった()がますます悪くなると学校から逃げ出し、腹いせに夜の街で野放図に振る舞ってきた。  そんな、本当にどうしようもない時期を経て、岳は今、少なからず謙虚になっていた。  表層には出さないが、貴久の言葉を聞き入れようと思わされていたのだ。  ……それに、認めるのは癪だが、貴久と優一に感謝していた。  そして、千景にも。  岳はため息をつきながら、ゆっくりと立ち上がった。 「帰る」 「あ……」  千景が、蒼ざめた表情でこちらを見上げてきた。なぜ、そんな顔をするのだろう。岳はぼんやりと考えた。俺がまだ怒っているとでも思って、焦っているのだろうか。  確かに、苛々している。けれどももう、千景を突き放すつもりはなかった。

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