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2018年12月24日-17
千景の右手がそろりと伸び、岳の濡れた頬に触れた。親指の腹で、涙の跡を撫でられる。
滲んだ視界に映る彼の表情は優しく、けれども細められた目の奥には、毅然とした光が灯っていた。
……こちらが何を言っても、千景はきっと、その光を消すことはないのだろう。
いくら後ろ向きになっても、こちらの欠点を列挙していっても、胸襟を開く度に弱さを露呈しても、千景はこうして、すべて受け容れてくれるのだろう。
千景もまた恥やプライドを捨て、思い出したくもないであろう過去を告白し、真面目な人間性を見せてくれた。
そんな彼の言葉や表情、温もりに、嘘はないだろう。
……この人を信じたい。
この人の気持ちに応えたい。
だから俺は、変わらなければいけない。
「……アンタのこと、徹底的に縛るけど」
千景は微笑を深めた。
「いいよ。俺だけを見て。君のことしか考えられないくらい、束縛して。君になら、何をされてもいいから」
涙の勢いが増した。弾けるような嗚咽が洩れる。一瞬だけ顔を伏せ、垂れ出た鼻水を乱雑に拭うと、岳は噛みつくように千景に口づけた。彼の後頭部や背に両手を回し、唇だけでなく身体も密着させた。
千景も、ぎこちないながらも岳の背に腕を回し、ダウンジャケットをぎゅっと掴んできた。そして、衝動的な岳の行為に応えるように、下唇をそっと食んできた。
……想いを寄せ、寄せられている男との口づけが、こんなにも切なく、苦しく、どうしようもないほどに幸福なものとは思わなかった。
胸のうちが破裂しそうなほどに満たされ、脳髄がぐわんと重々しく揺れ、戸惑う。けれども、頬をとめどなく伝う涙は、多幸感が横溢したものだった。止まることはなく、また止めるつもりもなかった。
互いの感触や熱を確かめるように、ふたりは唇を深くなぞり合った。やがて、それしか知らぬ生き物になったかのように、夢中で粘膜を擦りつけ、口の中を貪り合った。
その頃には、あたりの寒さなど、すっかり忘れてしまっていた。
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