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2019年2月16日-5
……優一がなぜ、晃一と面会したのか。その理由が、分かった気がした。
彼は過去をとうに乗り越え、それに囚われていないことを、晃一に見せつけたかったのだ。
それこそが、晃一との決別と言わんばかりに。
もう二度と、晃一と関わりを持たないために。
……容赦がなかった。
けれども、優一が決めたことだ。彼には彼の思いがある。兄の存在を捨て去って生きていくと彼が決心した以上、岳は何も言えなかった。
それでも優一は今、確かに、実兄と向き合っている。怖くて、今にも逃げ出したいに違いないのに、自らの思いをはっきりと言葉にし、晃一に伝えたのだ。
岳は優一の右手を取り、強く握った。
自分がしっかりしないと、と思っていたはずなのに、逆に優一に勇気づけられた。
俺も自分の気持ちを、目の前の男に伝えたいと、心の底から思わされたのだった。
「……俺も、アンタが事件を起こしてから、どうしようもなく腐った」
岳は、優一を横目で見ながら静かに口を開いた。
「俺のせいで、優一とこの人のパートナーには本当に面倒をかけたし、グレた俺の扱いに手を焼いたと思う。それでも、この人たちが見捨てずに育ててくれたから、今の俺がある。定職につけて、自分ひとりで生計を立てられるぐらい稼いで、生活してる。……本当に、感謝してもしきれない」
優一の泣き声が、大きくなった。周囲からの視線がますます増え、晃一は戸惑ったように瞳をよろめかせていた。けれどもそれ以上に、こちらの話に形容し難い思いを抱いているようで、顔が引き攣っていた。
気持ちが、どうしようもなく昂ぶってきた。けれども、それは良い意味でだ。
ひと呼吸おいたのち、晃一をまっすぐに見据えて話を続けた。
「俺にも、恋人がいる。俺には勿体ないくらいの良い人だ。その人がいてくれたから、今日、アンタに会う決心がついた。……優一は立ち直ってる。俺もようやく、前を向いて生きていく覚悟ができた」
そう話している間に、晃一は目に涙を溜めていった。それが一粒、二粒、頬に垂れ落ちていく。
目を伏せ、肩を小さく震わせながら、彼は静かに泣き出した。
その涙が意味するものを、岳は推し量ろうとはしなかった。
代わりに「ひとつだけ、訊きたいことがある」と晃一に言った。相手は手で涙を拭いながら、岳を見た。
「……なんだ?」
声を出そうとして、喉奥で何かに突っかかるような感覚を覚えた。が、それを乗り越えて、岳は胸のうちにおのずと浮かんでいた疑問を口にした。
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