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第6話
え、今本当に雪だるまが笑わなかったか?
「ぱぱー?なにしてるの?」
「あ、あぁごめん」
可愛い息子がコテンと首を傾げて不思議そうに見てくる。
はぁ…俺疲れてるのかな?
「はやののおにいさんにでんわするー!」
「早野さんでてくれるかな?」
「ぱぱからのでんわならぜったいでるよ!」
早野さんというのは会社の上司で何かと相談に乗ってくれるいい先輩だ。
幸が生まれてすぐ嫁に逃げられた俺は、どうやってこの子を育てていいのかわからず早野さんに泣きついた。
早野さんは独身で子供もいないのに俺のために色々調べてくれて幸のことを今でも面倒見てくれているから、幸もすっかり懐いてしまった。
「おでんわ〜!するのー!」
「わかったって、電話するからちょっと待って」
「はやく!はやく!」
「はいはい、あ、すみません堀内です、はい…はい、そうです…」
「はやののおにいさん!あのねーゆきね!だるまさんとうさぎさんつくったの!みにきて!」
「あ、ちょ…幸」
「ぱぱもさみしいっていってたからはやくきてね!」
「え、そんなこといってないだろ…!」
必死に弁解しようとするも、幸が既に電話を切ってしまっていた。
「すぐくるって!よかったねぇ」
「よくないよ!まって、家の中散らかってない?なにも準備してないよ、どうしよう!」
夕飯の準備もしてないし、洗濯物も取り込んだままだし、やることがありすぎて家の中をドタドタと走り回っている間、幸は窓からさっきつくった雪だるまと雪うさぎをじっとみていた。
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