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善くんと誠くんの話2
―誠―
予報では、今年一番の冬型の気圧配置だった。
目覚めると障子の外がぼんやり明るくて、夜のうちに雪が降ったことがわかる。
嫌々ながらベットから降りると、冷えた畳に容赦なく足の裏の体温を持っていかれた。
冷たい。冷たい。冷たい。
石油ファンヒーターをつけ、温かい布団の中に急いで戻る。
しばらくしてファンヒーターがボッと点火すると、灯油の匂いがただよってきた。
冷えた爪先を指でつかむ。布団から出たくない。むしろ家から出たくない。頭からすっぽりかぶった布団の中で、スマートフォンの時計と睨めっこをする。
電車の時間まであと三十五分。さすがにそろそろ出ないと、電車に乗り遅れる。
洗面と着替えを済ませ、父さんの部屋にある仏壇に手を合わせた。何年も前から姿の変わらない母さんが、写真の中で微笑んでいる。
「学校、行ってくっからな」
深酒をして寝ている父さんに声をかけた。返ってくるのは、いつもいびきだけだ。
発車五分前に駅に着き、ホームの一番端っこに立っている中尾に声をかけた。
「おはよ。今日もクッッソさびぃな」
中尾は高校でできた友達だ。
金髪で、ライオンみたいな髪型をしている。顔だけ見れば上品に見えなくもないのに、じゃらじゃらとつけたシルバーアクセサリーのせいで、ものすっごくガラが悪く見える。おまけにヤリチンだ。ガラ悪二割、チャラ八割。
中尾はMMORPG をしていたスマートフォンから目を離し、俺をジトっと睨んだ。
「相変わらず来んのギリギリだな。バス通学、舐め腐ってるだろ。こっちは待ち時間、四十分もあんだぞ」
「ふーん。ゲームしてたら、四十分なんかあっという間だろ」
「気温一度の中でもか?」
「……俺なら、無理。せいぜい五分が限度だわ。山の子と違って、上品で繊細 な体の作りしてるっけ」
「言ってろ」
他校の生徒が、俺たちを遠巻きに見ている視線を感じた。
俺たちの通う三和 高校は、この辺りで一番偏差値の低い学校だ。改造制服の着用、髪の染色、飲酒喫煙、不純すぎる異性交友。警察に厄介にならない程度の揉め事なら残念ながら日常茶飯事。
もちろん真面目な人もいるけど、派手なやつらが目立つから、周りからはヤンキー校だと認識されているらしい。
俺はもちろん、真面目なほうだ。中尾に思いっきり嫌味を言われそうなので、口には出さないでおく。
〝まもなく列車がまいります。白線の内側まで下がってお待ちください〟
騒々しいホームに、駅員のアナウンスが聞こえてきた。ふと、駅裏の美容室の看板が目に入る。
しまった、走ってきたせいで髪の毛がボサボサだ。スマートフォンの画面を鏡代わりにしながら、乱れていた髪を整えた。
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