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善くんと誠くんの話11

―誠―  バイトが終わり家に帰ると、善くんからメッセージが届いていた。内容を確かめる前に、電話がかかってくる。善くんだ。  どうしよう、どうしよう。  たいして広くもない部屋をうろうろして、なぜか電話に出ずにファンヒーターのスイッチを入れる。押すところはそこじゃない。  何秒か悩んだ後、電話に出た。 「ぼっ、もっ、もしもし」 「ぼって何?」  電話の向こうから、見なくても笑ってるとわかる柔らかい声がする。電話を通しているからか、直接聞く時よりも落ち着いた声だ。  もう一回、善くんの声が聞けた。  胸がとくとくと鳴っている。気持ちに蓋をしようとしても、もう手遅れみたいだった。 「なんか、用?」  電話をもらえて嬉しいのに、態度に出さないように気をつけた。何を言われるかわからないから、ほんの少しの沈黙が怖い。 「誠くんに、避けられてるような気がして」  善くんが静かに言った。避けられてるのは自分だと思っていたので、なんでそんな発想になったのか疑問で、言葉が出てこない。 「メッセージ、返さなくてごめん。期末考査で余裕なかったんだ。点数悪かったらスマホ返す約束、親としてたし」  考査が終わってすぐ連絡をくれる程度には、俺を気にかけてくれているらしい。  特別なんじゃないかと、浮かれそうになる気持ちを落ち着かせる。男同士だし、善くんに友達以上の気持ちなんてない。絶対ない。 「そうだったんだ」  落ち着かせようとするあまり、一言しか言えなかった。 「避けてたの、それが理由じゃなかった? 勘違いしてごめん。じゃ、電話切るね」  気まずそうに笑う善くんを引き止める。 「待って。避けてた理由、冷たくされたので合ってるっけ」  何か言わなければ。  でも、好きだなんて変なことを言ったら、気持ち悪がられる。今度こそ本当に避けられるかもしれない。

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