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森孝くんと結しゃんの話7
―結人―
新幹線でトンネルをくぐるたび、季節が変わったように思えるほど景色が明るくなる。
太陽の光が強くなり、建物が高くなっていく。
都心に住むおじいちゃんの家に行ったのは、期末テストが終わってすぐのことだった。
新幹線ホームを急ぎ足で降りていく人の背中を見ていたら、ぼくの足取りも次第に早くなっていた。重い衣を脱いでいくみたいに、一歩、足を進めるごとに体がふわりと軽くなっていく。
ぼくにとっては、東京の人の無関心さが心地良い。誰もぼくのことを〝オカマみたい〟だなんて、後ろ指で指したりしない。
通学に一時間もかかる高校にわざわざ通うほど、ぼくは、ぼくの住んでいる町が大嫌いだ。
おじいちゃん家の最寄駅まで行くと、おばあちゃんが車で駅まで迎えに来てくれていた。
昔、国際線のキャビンアテンダントをしていたというおばあちゃんは、もうすぐ七十歳のはずなのに、いつも華やかな服装をしている。
「結、いらっしゃい。夏休みぶりね!」
「おばあちゃん、久しぶり」
はじけるような声を聞いて、ぼくの声もつられて明るくなった。
明日は友達と遊びに行く――ということにしてあるので、今日は夜まで、おばあちゃんとデートの予定だ。
まずはデパートで服を買い、おばあちゃんご用達の美容室でヘアメイクを済ませる。ぼくをレディにするのが、おばあちゃんのたくさんある楽しみのうちの一つらしい。
ひと通り着せ替え人形になった後、おばあちゃんが気になっていたというタピオカドリンク専門店に行った。茶葉にこだわったお店らしく、紅茶好きなおばあちゃんもお気に召したらしい。
その後も、おじいちゃんとじゃ行けないという場所を巡り、家に戻る。
「疲れたでしょう、先にお風呂に入ってきたら?」
おばあちゃんは手洗いを済ませると、コンロに置かれた鍋と冷蔵庫を確認しながら言った。手料理が壊滅的に下手なので、お手伝いさんに作ってもらっているらしい。
手伝えることはなかったので、ぼくはおばあちゃんの言葉に甘えることにした。
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