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森孝くんと結しゃんの話14
俺の家は、農業体験に来た外国人に旅館と間違われるほど、ばかでかい。土地が安いせいか周りも広い家が多いけど、その中でも一際でかかった。
買ってきて欲しいと頼まれた菓子をばあちゃんに渡して、自分の部屋のある二階に上がった。
結人は怯えた様子で、俺の後からついてくる。
「さあ、可愛い子ちゃんはこっちのお部屋よ……!」
小百合は嬉々とした表情で、結人を自分の部屋に連れて行った。怯えきった結人と目があったが、命の危険まではないのでそのまま見送る。
それからしばらくして、部屋のふすまが開いた。
あの日と同じ、女の子の姿の結しゃんが立っている。
「へい、カモン」
小百合が親指を立てて呼んだので、結しゃんの脇をすり抜け廊下に出た。ふごふごふごと、珍獣かと思うくらい小百合の鼻息が荒い。
「森孝が好きそうないちごのパンツ、結ちゃんにはかせといたから。〝清純な女子高生が大人になるまで〟ってAVに、いちごのパンツはいてる子いたでしょ?」
「いたけど……そりゃ、まこっちが選んだAVだよ。つぅか部屋入んなし。中身までチェックしてんな」
「パンツ、ちゃんと新品のだから安心して?」
「日本語通じてる? 親指立ててグー!じゃねぇ」
「はいはい、わかってるから」
いったい、何を分かってるんだか、俺には分からない。
小百合は意味深な笑みを浮かべながら、廊下をはさんで向かい側の自分の部屋に戻っていった。ふすまの閉まる音がぴしゃんと聞こえる。
俺は入り口で立っていた結しゃんの手を引き、適当に放ってあったクッションの上に座らせた。
体育座りをした結しゃんのスカートから、白い太ももが見えている。
結しゃんはうつむいて、目も合わせてくれなかった。
この後どうしよう。女装させたあとは完全ノープランだった。
結しゃんの前にしゃがみ込むと、結しゃんはこぶしを握り締め、震える声で呟いた。
「……い、言わないで」
頭の中にハテナマークが何個も浮かぶ。
「言わないでって、何を?」
「女の子の格好……してたこと」
元々小さな体をさらに小さくし、結しゃんは消えそうな声で言った。
そうか、俺に脅されるとでも思ったのか。
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