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高山先生と太陽くんの話7

―太陽―  六時間目の授業が終わり、部活に行く森孝と、図書室に向かう誠をそれぞれ見送った。  誠に追いつかないよう、おれも時間をおいてから実習棟に向かう。  やましいことなんてないのに、高山先生に勉強を教えてもらっていることは誠には知られたくなかった。自分でもまだ分からない、もやもやとした高山先生への気持ちを見透かされそうだったからだ。  足音がひたひた聞こえるくらい、放課後の実習棟は静かだった。 「失礼します。高山先生、いますか?」 「どうぞ。入って」  開いていた理科準備室の扉の前で声をかけると、中から高山先生の声がした。 「あれ、他の先生たちは?」  準備室の中にいるのは高山先生だけだった。コーヒーメーカーが静かにコポコポとモーター音を立てている。 「他の先生方は出張だったり、年休取ってていないんだ。そうだ、宮地って甘い物好き?」 「好きだけど……なんで?」 「育休に入ってる先生が子供を見せがてらケーキ持ってきてくれたんだけど、日持ちしないから食べてって」  先生は小さな冷蔵庫の扉を開けながら、おれをソファに座るようにうながした。取り出したケーキの箱をソファテーブルの上に置く。  箱の側面に銀色の文字が光っている。誠の地元にある、有名なお店のケーキだ。 「え、いいの?」  開いた箱には、色とりどりのケーキが入っていた。 「いいのいいの。だめになったらもったいないし、みんな大人なんだから、誰も俺のケーキ食べた!なんて怒らないよ」  先生はそう言って、食器棚からマグカップを取り出した。コーヒーを注いでおれに差し出してくれたので、両手で受け取る。ほかほか温かい。  マグカップには、赤いぶつぶつしたモンスターが書かれていた。確か、ウルトラマンに出てくる――なんだっけ。  気持ちの悪いそいつとにらめっこしていると、 「クリープと砂糖いる?」  先生に問いかけられた。  コーヒーの匂いは好きだけど、味は苦手だ。 「はい、いります」 「どうぞ。スプーンも使って」  先生に手渡された砂糖とクリープの蓋を開け、スプーンですくう。遠慮して、それぞれ三杯、カップに入れた。

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