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少し時が戻りまして1

坂本誠+中尾森孝 ―誠―  ――入学式の日。  新しいローファー下ろさなきゃよかったかも。俺は雪解け水を踏みながら校門前の坂をのぼっていた。桜はまだ蕾が出始めたばかりで、春本番にはまだ少し遠い。  (あ、玄関の前、人がたまってんな)  人がはけた隙をねらって、玄関前に掲示されている名簿の紙に目を通す。  俺が入ることになった三和高校では、成績の良い順に、A組、B組、C組、D組とクラス分けがされているのだと中学の先輩に教えて貰ったことがある。D組は問題児ばかり集められた男だけのクラスだそうだ。  もちろん俺は、A組だろう。  なぜならば新入生代表の挨拶を任されているのは俺だからだ。あれって、一番成績がよかったやつがなるもんだろ。  何の疑いもなくA組から目を通す。B組、C組と通り過ぎても名前は見つからなかった。いやいやいや、まさか。  見逃さないように指でなぞり、D組の最後のほうで名前を見つけた。うわー、問題児クラスかよ。  立ちつくしたままの俺の後ろで舌打ちが聞こえる。初日からこわっ、俺は素早く場所をあけて校内に入った。  D組にぶち込まれたことにガッカリしながらも、納得もしていた。中学二年の時、先公を殴って停学をくらってたからだ。  三年の時はめっちゃ真面目だったのに。翔嶺高校にだって入れるくらい勉強も頑張ったのに。  重い足取りで二階にある1年D組の教室に向かった。教室棟の一番手前だ。  開け放たれた扉から、入学式当日とは思えないほど騒がしい声がした。 「おはよーございます……」  聞いちゃいないだろうけど、挨拶をしてから教室に入る。  赤白黄色の頭がこっちを振り返って、挨拶を返してきた。よかった、チューリップみたいな色の頭でも常識はありそうだ。  オールバッグに短ランという時代錯誤なヤンキーにはどスルーされたが、時代が違うから仕方がない。平和に暮らすからには俺もいにしえの言葉を習得しなければ。

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