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少し時が戻りまして2

 生徒玄関前にあったのと同じように、黒板にはられた座席表を確認してから席に座る。ラッキー、窓際。  香水と煙草臭い教室にうんざりしていたので、少しだけ窓を開ける。真冬と違う、心地よく冷えた空気が流れこんできた。  後ろの席の椅子が乱暴に引かれた。ガタガタと音がする。 「やらしくお願いしゃーっす」  シルバーに近い金髪の野郎が笑顔を向けてくる。ライオンヘアーで、派手なヒョウ柄のパーカーを学ランの中に着ていた。  植物園と動物園、俺が紛れ込んだのはどっちだろう。高校に来たはずなのにおかしいなぁ。 「やらしくはお願いされたくないけど、よろしく」  朝からハイテンションにはついていけず、俺はぺこりと頭を下げた。  頭の中では、このクラスでどんなポジションにいればいいのか考えていた。  キャラを作らなきゃついていけない気がしたけど、あまり素の自分と遠いキャラで三年間を過ごすのはキツい。  ライオンヘアーが問いかけてくる。 「……低血圧? ノリ悪くね?」  昨日の夜、酒で荒れてた父さんのせいで寝不足なんだけど、そういうことにしておこう。 「そうそう。俺、低血圧。朝ノリ悪いけど、気にしないで」 「なんだ、低血圧か。てっきり、どうやって学校シめるのか考えてんのかと思った」  学校シめるって、ヤンキー漫画の読みすぎだろ。何十年前のノリだ。 「学校シめるって、物騒すぎるろ。学校くる時、三年生見なかった? ケンカ売った瞬間、殺される気しかしないろ。ヤンキー通り越して、ヤクザにしか見えない人いんじゃん。ガタイ良すぎて」  言いながら、学校に来る道すがら見かけた上級生を思い出した。高校三年間平穏無事ですごしたいのに、ケンカなんて売るわけない。長い物にはクルクル巻かれる主義なのだ。 「ならよかったァ。今、学校シめてる先輩は平和主義だっけ、学校落ち着いてるけど、荒らすやつがいると容赦しねぇらしいぞ。二年のヤンキーが少ないの、そのせいだって、一個上のねーちゃんが言ってた」  平和主義?  ぜんっぜん平和主義そうに見えないガラの悪い先輩が平和主義なんて言葉を掲げてるのは逆に怖い。恐怖政治してるだけだろ。 「ナイナイナイ。それ聞いてタマタマ、ヒュンッてしちゃった。鳥肌見る? ヤバいよ」  俺は袖のボタンを外して、学ランごとシャツを捲り上げる。 「うわ、本当だ。お互い平和に過ごそうぜ、三年間」  差し出してきた拳にエアーでお返しする。人語を話せるライオンでほっと一安心した。

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