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少し時が戻りまして5
女は声をくぐもらせながらイったみたいだった。
「あーちゃん、イクの早すぎ。一年のやつらつまみ食いしてんの知ってんだけど、誰も満足させてくれなかったの?」
「だって、同い年の男の子って、ただ単に腰振るの早いばっか、なんだもん……っ」
気持ち良すぎて声にならないのか、下が立てる音だけが激しくなっていく。
息を呑みながら、俺は股間を見下ろした。半勃ちだったそこがパンパンになっている。これは不可抗力だよな、とおさまりそうもない息子に問いかける。返事はなかったが不可抗力だ。トイレなんかでやり始めるほうが悪い。
音が鳴らないようにベルトを外し、ボクサーパンツから臨戦態勢のブツを取り出した。
「あーちゃん、ちゃんと俺の形覚えててエライね。久しぶりにすると、大抵、痛がんのにな」
「おっきいの、好き……っ、りっくんのじゃないと、もう足りない……っ」
陸人くんがどれほどのモノをお持ちか知らないけど、少なくとも俺も満足させられない側の人間だろう。
かわいそうなブツを握って、上下に動かす。
すぐにプクリと先走りが浮かんできた。無理に息を抑えてるから肺の奥が痛い。頭がガンガンする。眠気はとっくに飛んでいた。
「ははっ、突かれながら潮吹いてんの?」
「……あっ、もう、中に出して……っ、また、いっちゃう……っ」
「今度、あーちゃんが中出しされて喜んでるところ、誰かに見てもらおうね。口堅そうなやつ、誰か見つくろっておいて」
「いじわる……っ」
なんて羨ましいシチュエーション――じゃない、けしからんシチュエーションだ。
「あーちゃん、可愛いね。高校いる間だけでも、俺の専属になって。そしたら浮気しないでいてあげる」
女の声がひときわ大きくなった。
「あっ、いっちゃう、いっちゃ――」
「一滴もこぼすなよ」
陸人くんは小さく〝葵〟と言った。
(……葵?)
疑問が浮かんだけど深く考えられない。昂りすぎていて、我慢できなかった。精液を吐き出しながら、陸人くんの呟いた名前を頭の中で何度も繰り返す。
葵って、あの、葵ちゃんか?
ギャルだらけのうちの学校で、唯一と言っていいくらい清純派の葵ちゃん?まじか。
後処理を済ませている二人にバレないよう、ゆっくりとトイレットペーパーを引き出す。ほんの少しだけカタリと鳴ったが、バレた気配はなかった。
俺は茫然としながら、トイレットペーパーで手をぬぐった。
いや、陸人くん、そこは最後まであーちゃんで通してよ。人の恋心を砕く天才か。
下半身はすっきりしたはずなのに、心の中は全然すっきりしない。ブロークンマイハート。バイバイ俺の一ヶ月だけの恋。
相手にもされてなかったし、本気で好きだったわけでもなかったけど、現実が悲惨なんだから夢くらい見させてくれよ。
二人がトイレから出ていったあと水道で手を洗っていると、すぅっと冷たい空気が足元に流れ込んできた。
流れてきた方向に目を向ける。さっき出て行ったばかりの葵ちゃんが、廊下に繋がる扉の前に立っていた。
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