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雑なキューピッド7

―善― 「急だったのが怖かっただけ」  まこは震える声を必死に抑えながら言った。  たぶん、前に須藤が言っていた、〝簡単に触れたらいけない過去〟に触れた。二人になって浮かれていた頭がすうっと冷静になっていく。 「つらい思いさせるつもりなかったのに、無理に言わせてごめん」  まこに伸ばしかけた手をとめた。触ったらまた嫌な思いをさせるかもしれない。  だけど震えるまこをただ見ているだけじゃもどかしくて、まこに問いかける。 「ギュウしたいってことは、いきなりじゃなかったら触っても平気?」 「……ん、ハグするくらいなら、多分へーき」 「わかった。じゃあ、今からギューってするからね?」  まこに言って、毛布の中でポコンと膨らむまこの背中を抱きしめる。一瞬力が入ったものの、段々と体の強張りがとけてきた。 「嫌じゃなかったら、顔見せて? 大丈夫かどうか確認したい」 「……ん」  毛布から顔を出したまこを、もう一度抱きしめる。今度はまこからも抱きしめ返してくれた。抱きしめて、抱きしめられてをくり返す。  安心したような顔をしているまこを見て、さっきおあずけにされたジュニアが出番とばかりに大きくなった。  勘違いだから引っ込んでて。メッ。願いは悲しくも却下され、そこは元気に主張を始めている。  まこも膨らみに気づいたみたいだった。 「善の、大っきくなってるね」 「こんな流れで元気になる、だめな子ですみません」 「ううん、善が俺で興奮してくれることは、嬉しいよ。拒否っといて勝手だけど、ほんとに嬉しいから」  照れたように笑うまこに、さらに下半身がギュンとなる。まこは火に油をジャブジャブそそいでいる自覚はあるんだろうか。  必死さがにじまないようにプクっと頬をふくらませた。 「もう、煽らないの。触りたくなっちゃうでしょ」 「さすがにエッチできる自信はないけど、手で抜く? 触るくらいなら平気かも」 「うわっ、魅力的なお誘い。でも無理しなくて大丈夫だよ。ギューしてるだけで幸せ」 「無理じゃなくて、触りたくなったとか言ったら引く?」  言っておいて恥ずかしくなったのか、まこは俺の肩に顔をうずめた。また毛布に隠れようとするまこをつかまえ、ギュウする。 「全然引かないし、嬉しい。触ってくれるの?」  何度か抱きしめていると、まこは観念したように毛布から出てきた。神妙な顔で俺に向きなおり、手を伸ばしてくる。なぜか正座だ。  まこはおそるおそる下に手を伸ばすと、指でボタンを外した。山型に膨らんだファスナーを少しずつおろしていく。

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