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味覚音痴は誰ですか?3

 ファンヒーターの火が燃える音が聞こえるほかは、チュクチュクと唾液が混ざり合う音だけが鳴っていた。  興奮しすぎて下が痛い。 「恥ずかしすぎて、消えたい」  ベッド下の衣装ケースの中でいいから、逃げ出したかった。多分はみ出るけど。  腰を浮かせると、善に手で静止される。 「まこ、チュウ興奮する? 嫌じゃない?」 「全然嫌じゃないけど、恥ずかしすぎてもう無理。下のほう、見ないで」  キスが嫌じゃないのは本当だ。体を売ってた時も、先公に無理やりされた時も、キスだけはしなかったからだ。トラウマになるような思い出はなかった。 「嫌じゃないなら、やめない。恥ずかしいことになってるの、まこだけじゃないし」  善は俺の股間に目をやったあと、自分の高ぶりにも視線を移した。そこは俺に負けず劣らず、元気に主張している。 「一緒でも、恥ずいの」 「チュウしてれば見えないよ。はい、続き続き」  善は俺の後頭部を引き寄せた。初めてって言ったわりに慣れてる感じなんだよな。  再び唇が触れる。善の吐息が甘い。頭がぼうっとする。もっと続きがしたい。 「エロいチュウしたの、善からだから……ね」  言い訳みたいに言って、スウェットから下を取り出した。  善は少し驚いた目をした後でさらに深いキスに変える。見えないけど、ごそごそと布の擦れる音が聞こえた。善も下を脱いだんだろう。 「可愛い……まこ、可愛い。チュウだけで、目ぇとろとろになってる」 「見んなって」  俺はギュッと目をつぶった。余計に頭の中がベロの感触と唾液の音に支配される。耳も舌もとろけそうだ。  今までで一番硬くなってる下を手で動かした。亀頭が先走りでどろどろになっている。 「目、開けてくれないなら、下見ちゃうけど、いい? まこがどんな風に触るのか、見たいな」 「……こないだ、見たろ」 「可愛かったから、もう一回。嫌なら、視線こっち」  どっちがマシか考えて、善の目を見た。  熱を持った眼差しを向けられ、やっぱり下を見られるほうがマシだったかなと後悔する。 「……っ」  昔、気持ちよさを覚えさせられた体の奥が熱い。ダメだ、これ以上してたら変なこと口走りそう。弄られたくなるなんて知られたくないのに。  俺は善の口に乱暴に舌をねじ込んだ。早く熱をおさめようと扱く手を早くする。 「あっ、もう、もたない……っ、いく……っ」  とぷとぷと精液を吐き出しても、律動がなかなかおさまらなかった。 「まこのいくとこ、可愛い。俺も続きするから、チュウするお手伝いだけして?」  善は、快感でゆるんだ俺の口に舌を差し入れた。いったばっかだっていうのに、頭の中が簡単にぐずぐずにとろける。  また下が反応しそうだった。  善が意地悪く笑った。 「もう一回する? チンチン固くなり始めてる」 「これ、余韻だから、余韻。もう一回するほど節操なくない」  情けないことに、とっくに反応していたみたいだった。  かろうじて耐えている間に善も果てたみたいだ。ティッシュに手を伸ばして、出したもんを拭っている。 「はい。まこ、手貸して」 「ん、ありがとう」  善に言われて手を差し出す。ティッシュをくれるのかと思いきや、反対側の手首をつかまれた。 「ん?」  俺の手を口元まで持っていった善は、何を思ったのか、手のひらをべろんと舐めた。出した精液の半分くらいは舌で持っていかれている。 「いやいやいや、何してんの?」  体はだるいけど、一気に正気に戻った。  精液のくそまずさは先公のせいで嫌ほど思い知らされている。 「なんか、ティッシュで拭うの、もったいないなって」  可愛い顔で首をコテンとさせた善。可愛い顔してもだめだから。  もう一度舐められそうになって、手を引っ込めた。 「もったいないとか、意味わからんて。バッチいの舐めないの!」 「汚くないよ。美味しかった。甘くて、もっと舐めてたくなる」 「いやいやいや、俺の味覚もヤバいけど、善もヤバいな。今度から料理褒められても嬉しくないんだけど」 「それとこれとは別。……というか、まこ、こういう恥ずかしいの、好きでしょ」  〝勃ってる〟  耳元で囁かれて、俺は衣装ケースの引き出しに手をかけた。 ―END―

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