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初めての初詣1

清水善×坂本誠 
―誠―


  大晦日の今日も、22時までバイトだった。

  風呂から上がり、タオルで髪を拭きながら部屋に向かう。玄関に置いてある温度計は2度だった。せっかく温まった体が冷えないようにと少しだけ急ぎ階段を上がる。 

 部屋で髪を乾かしていると、スマートフォンがぼんやり光った。善からの着信だ。咳をして、少し声を整えてから電話に出る。

 「もしもし? 勉強お疲れ様。さっき風呂上がったとこ」
 「まこもバイトお疲れ様。もう髪乾かし終わった? 髪長いから、風邪引かないようにちゃんと乾かしてね」
 「もうあらかた大丈夫。言われてみれば長いか、中学ん時のダチに、ホストみたいだって笑われたことあるし」 
「ちょっとヤンチャに見えるけど、まこに似合ってるから好きだよ」  

〝もちろん、まこも〟なんて付け足され、返事に困って話題を変える。

 「もう電話の回線混んでなかった?」
 「大丈夫みたい。普通にかかったよ。一緒に年越したいし、早めにかけてよかった」 

 電話の向こうで善が柔らかく笑う。よくサラッとそういうこと言えるよな。一緒に年越したいとか……。

  嬉しくて胸がキュッとなる。喜んでるってバレたら恥ずかしいから、声が上擦らないように気をつけないと。 

「……えっと」

  上擦らないようにと思っていたら、それに集中しすぎて何も話題が浮かばなかった。不自然に間があく。

 「ンフッ、まこ可愛い~。そんなこと言われただけで照れてるの?」 

 当てられて、口がへの字になった。

 「照れて、ないし」
 「はは、照れてないんだ。そっか、ふぅん」

  意味深な笑い声が返ってきた。どうやら善には、俺の思ってることが筒抜けらしい。

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