74 / 83
初めての初詣2
父さんに善との会話が聞こえてたら嫌だな。
テーブルの上に置いてあったリモコンに手を伸ばし、そっとテレビの音量を上げる。
ちょうど、カウントダウンがスタートした。
3、2、1――。
テレビの向こうで歓声が上がっている。
「明けましておめでとう。今年も去年以上にラブラブしよーね」
「おめでとう。ら、ラブラブって……!」
「……嫌?」
「嫌、じゃないけどさ、そんなストレートに言わんくても」
「ストレートに言っておかないと伝わらないかなって思って。そういえばまこって、四日の午前中は予定ある?」
思い出したように善が言った。
「夕方からはバイトだけど、午前中はなんもないよ。……なんで?」
「午後から冬季講習で学校行くから、もしよかったら一緒に初詣に行けたらなと思って」
「え、マジで。いいの?」
「ごめん、日付指定した上に、学校の最寄駅のお寺で。無理だったらいいから」
「行く行く! 絶対行くっ」
あ、嬉しすぎて超食い気味に言っちゃった。
須藤から、〝清水の家は俺ん家と違って厳しいから、中々遊べないと思っておけ〟って言われてたし、思わず。
善は今度は笑わないでくれた。
「ありがとう。会えるの嬉しい」
「善も誘ってくれてありがと。何時の電車にしよっか?」
この辺りの電車は一時間に一本しか無いから、〝何時〟の電車で伝わる。
「講習がある時はいつも八時の電車だから、早いけどそれでもいい? 四日だけ午前の講習が無くて自由にできるんだよね。ごめんね、俺の都合ばっかで」
会えるだけで嬉しいから、申し訳なさそうになんて言わなくていいのに。
「ううん、会えるの楽しみにしてる」
善みたいに甘い言葉はさらっと言えないけど、少しだけ素直になってみた。
てか、家に来たことはあるけど、休みの日に外で会うのって初めてだよな。
「やった。初デートだね」
「……へっ、デート?」
「二人で会うの、それ以外に言い方ある?」
「無い、です」
デート……デートか。そんな事言われたら緊張するじゃんか。はぁ、もう胸がバクバクしてきた。
「まこかーわいい、もう緊張してるんだ」
「へっ?」
お願いだから、俺の心の中を読むのはやめてくれるかな。もしかして、この間家に来た時にカメラでも仕掛けた?
電話を切った後、ガチでカメラが無いか部屋中をくまなく探し回った。
ともだちにシェアしよう!

