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初めての初詣2

 父さんに善との会話が聞こえてたら嫌だな。  テーブルの上に置いてあったリモコンに手を伸ばし、そっとテレビの音量を上げる。 

 ちょうど、カウントダウンがスタートした。 
 3、2、1――。  テレビの向こうで歓声が上がっている。 

「明けましておめでとう。今年も去年以上にラブラブしよーね」
 「おめでとう。ら、ラブラブって……!」
 「……嫌?」
 「嫌、じゃないけどさ、そんなストレートに言わんくても」
 「ストレートに言っておかないと伝わらないかなって思って。そういえばまこって、四日の午前中は予定ある?」

  思い出したように善が言った。 

「夕方からはバイトだけど、午前中はなんもないよ。……なんで?」
 「午後から冬季講習で学校行くから、もしよかったら一緒に初詣に行けたらなと思って」
 「え、マジで。いいの?」
 「ごめん、日付指定した上に、学校の最寄駅のお寺で。無理だったらいいから」
 「行く行く! 絶対行くっ」

  あ、嬉しすぎて超食い気味に言っちゃった。 

 須藤から、〝清水の家は俺ん家と違って厳しいから、中々遊べないと思っておけ〟って言われてたし、思わず。 
 善は今度は笑わないでくれた。 
「ありがとう。会えるの嬉しい」 
「善も誘ってくれてありがと。何時の電車にしよっか?」

  この辺りの電車は一時間に一本しか無いから、〝何時〟の電車で伝わる。

 「講習がある時はいつも八時の電車だから、早いけどそれでもいい? 四日だけ午前の講習が無くて自由にできるんだよね。ごめんね、俺の都合ばっかで」

  会えるだけで嬉しいから、申し訳なさそうになんて言わなくていいのに。

 「ううん、会えるの楽しみにしてる」

  善みたいに甘い言葉はさらっと言えないけど、少しだけ素直になってみた。
  てか、家に来たことはあるけど、休みの日に外で会うのって初めてだよな。

 「やった。初デートだね」 
「……へっ、デート?」 
「二人で会うの、それ以外に言い方ある?」 
「無い、です」

  デート……デートか。そんな事言われたら緊張するじゃんか。はぁ、もう胸がバクバクしてきた。

 「まこかーわいい、もう緊張してるんだ」
 「へっ?」 

 お願いだから、俺の心の中を読むのはやめてくれるかな。もしかして、この間家に来た時にカメラでも仕掛けた?
 電話を切った後、ガチでカメラが無いか部屋中をくまなく探し回った。

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