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初めての初詣3

 朝、洗面をすませると、俺は自分の部屋に戻った。  ドライヤーで髪を半乾きにし、コテで整える。いつもはドライヤーで乾かすだけだけど、つい気合を入れてしまった。  ワックスやコテで奮闘し始めてから数十分。俺は後悔していた。気合いが入りまくって、どこぞのホストが誕生している。  うわー、シャワー浴びる時間なんてないし。  どうしよう、なんて思っても後の祭りだ。  諦めて家を出ていく。善に会うの気まずいなぁ。いくらなんでも気合いが入りすぎた。  今日の空は珍しく快晴で、空気が肌を刺すように痛かった。道路はアイスリンクみたいに凍っていて、長靴を履いているのに、ゆっくり歩かないと簡単に滑りそうになる。 

 思ったより時間がかかってしまったので、駅に着くと階段を一段飛ばしで上がった。改札を抜け、ホームに続く階段をかけ降りる。

 「はぁっ、なんとか間に合った」 

 ホームに入ったばかりの電車の扉を手で開けると、温められた空気が一気に流れ出してきた。  冬休み中の車内は、いつもと違ってガラガラだ。

 「まーこ、おはよう」

  俺の姿を見つけ、善はフワンと笑った。三白眼気味の目が優しく細まる。この笑顔に俺はけっこう弱い。

 「お、はよう」

  俺は挨拶して、ボックス席に座る善の向かい側に腰を下ろした。だって、車内はガラガラなのに男二人で並んで座るなんておかしいし。 

「まことくん、手ぇ繋げないんですけど」 

 俺をジトッと見て、善が不満そうに唇を尖らせる。

 「仕方ないろ。俺だって別に好きでこっち座ってるわけじゃないが。こんなところで手ぇ繋いでたら変に思われるろ」
 「人いないのに、気になる?」
 「……なる」
 「ふぅん」  ぷいっと善は外のほうを向いた。わざわざ曇ったガラスを指で擦って、窓の外を眺めている。

  怒ってるかな? 怒ってるよな。  男でも惚れ惚れするほどクールな善の目が、今は背筋が凍りそうなくらい怖い。

  せっかく会えたのにケンカするって、寂しいな。いつも朝に繋いでいる善の手をチラリと見る。やっぱり周りなんて気にせず繋げばよかった。別に見られたって困る事はないし。 

 触りたい。  さっきみたいに優しく笑ってくれたら俺から握るから、こっち向いてくんないかな。だけど善は窓の外を向いたまま。いつもはすぐ伝わる気持ちが、今は全然届かないみたいだ。

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