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 家に帰り、夕飯を食べ終わったところで、急に蓮がぎゅっと抱きしめてきた。 「オレ、この暮らしけっこう気に入ってるんだよね。ふたりの世界だけで完結してる感じ」  突然の話題に驚く。  しかも、まさか蓮がそんなことを言い出すとは思わなかった。  家族への手紙を書くよう勧めてくるくらいだから、いつまでもここに閉じこもっていちゃだめだと考えているだろうと思っていた――俺だって、頭では『いまのままでは良くない』と分かっていたし。  でも本音では、蓮も俺も、このぬるい閉じた世界が続けばいいのにと思っていたということだ。 「俺も、ずっとこんな風に、蓮とふたりだけで生きていけたらいいのにって思うよ。他の誰かと関わらなければ、怖いことはひとつもないから」  ふわふわのパーマヘアに手を差し込み、感触を確かめる。 「でもそれじゃダメかもって、最近ちょっと思ってる」  蓮は俺の頭をなでながら、眉根を寄せて笑った。 「そうだよな。オレいま、1日中ずーっと弓弦のこと抱っこしてられて、すごい幸せなの。でも、オレがずっと閉じ込めてたら、弓弦がいつまでも外に踏み出せないもんなって思う。足引っ張りたくはない」 「えっ?」  突拍子もないことを言われて、本気で焦ってしまう。 「閉じ込められてるなんて思ってないよ。蓮が大事に守ってくれてるから死なずに生きていられてたわけだし。感謝こそすれ、足引っ張ってるなんて思うわけない」 「でもオレ、弓弦が自分の力で生きていく意欲を奪ってる感じがずっとしてた」  蓮がそんな風に考えてるなんて、全然気づかなかった。  でも、そう思わせてしまったのなら、おそらくそれは俺に原因がある。  たぶん、もっと俺から『好き』と言葉で言われないとダメ。  俺がちゃんと好きだということを伝えていないから、こんな風に『自分の勝手でこの状況にしてる』なんて考えてしまっているのだという気がした。 「俺の生きる意欲なんて……蓮以外のどこにあるんだよ」  胸のところに顔を埋める。  蓮はしばらくじっとしたあと、つむじにキスしてきた。 「ベタベタに可愛がりたいな。いい?」 「うん」  言葉での愛情表現は難しいな、と思う。  シンプルに好きだと言えばいいのだろうけど、どのタイミングで言っていいか分からないし、いざ言おうとすると言葉に詰まってしまう。  お互いシャワーを浴び、自分は準備の時間をちょっともらって、布団に入ってこちらに背を向けている蓮の横へ滑り込んだ。  背中にぴったりくっついて、バックハグのように抱きしめる。 「なに。いきなり可愛いんですけど」  腕をゆるめると、蓮はくるっとこっちを向いた。 「蓮、あのさ」 「ん?」  目を細めて笑い、頭をなでてくる。  俺のほうが年上のはずなのに、甘やかすような目線で見られると、自分はただねだるだけの子供のようになってしまう。 「あの……、キスしたい」  好きと言いたかったのに、また違うことを言ってしまった。  蓮は、ついばむようなキスを何度か繰り返したあと、徐々に深く、舌を差し入れてきた。 「ふ、……はぁ」 「……ゆづる、かわいい」  する前に好きって言う。  お風呂の中でそう決意したのに、全然ダメで、背中に回した腕でぎゅっと抱きしめるくらいしかできない。  上半身のあちこちにキスされて、胸を攻められる頃には、ただただ甘い声をあげるばかりになる。 「んっ、んあ……はぁっ」 「あとどこなめてほしい?」 「いっぱい、ッ……ぁ…」 「弓弦はほんと素直になった」  そう言って蓮はうれしそうにするけれど、ほんとは、1番大事なことが素直に言えていない。  乳首をちゅうっと吸い上げられた。  ビクッと体が跳ねる。 「あッ……、はぁ、……もう、欲しい」 「分かった」  指で丁寧にほぐされ、手前の良いところを何度も触られて、その度に体がビクビクと波打つ。  ペニスには触ってもらえず、震える先端から先走りがこぼれていると、蓮に教えられた。 「挿れるよ」 「……っん、はぁ」  蓮のものが中に入ってくると、安心感と興奮が入り混じった、なんとも言えない感覚になる。 「ここ、弓弦の好きなとこ」  手前のところを、軽く突かれる。 「…あっ、ん、いきなりはむり、」 「じゃあ奥しようか」  奥まで侵入する感触と、艶っぽい蓮の視線で、ゾクゾクする。 「あ……、んっ…キスしたい」  空中に手を伸ばすと蓮の大きな手が捕まえてくれて、そのままシーツにべったりと押し付けられた。  そしてぐっと体を倒して、深く口づけてくる。  中を貫かれながらキスをすると、徐々に酸素が足りなくなってきて、頭がぽわっとするから気持ちいい。 「……ふぁ、っんん、はあ」 「弓弦、好きだよ。可愛い」  余裕なく、こくこくとうなずく。  張り詰めたペニスは蓮のお腹にやんわりとかすっていて、弱い刺激に身もだえてしまう。  蓮は体を起こすと、俺の腰を支えて、入口近くの良いところを突いてきた。 「ぁあッ、ん、はぁ……っ、あッ…きもちい」 「オレも。頭おかしくなりそ」  上をえぐるようにしながら奥へ。  繰り返されると、体の中心に熱いものがじんわりと集まってくる感じがする。 「ぅあ、れん……っ、何かへん、はぁ」 「前触んないでもイけるかな」 「……ン、ぁあっ…はあ、あ、ぁあ」  良いところを何度も突いてきて、声が上ずってくる。  蓮は、濡れた瞳で俺の全身をまじまじと眺めて、衝動をこらえるように息を詰めながら言った。 「すごい、先走り……まだイッてないんだろ?」 「んんっ……」  指摘されて猛烈に恥ずかしくて、でもそれが気持ちよさに繋がって、更に興奮してくる。 「あ、イきたい……触って」  ねだってみたけど、蓮は何も答えず繰り返し中を突き続ける。 「蓮、ぁあッ…おねがい、ん、っはぁ」 「このままイけるよ」 「ぁあッ」  思わず腰をくねらせる。  蓮は生唾を飲み込んで、律動を速めた。 「んっ、はあ、……あぁっ、イきたい、イ、っはあ、ねえ蓮、おねがいもう」 「これ気持ちよくない?」 「ぁあああっ」  ゴリッと突き上げられた。  思わず背を反らしたけど、同じように何度も攻められて、絶叫に近い嬌声が上がってしまう。  自分の手を噛んで抑える。 「……っ、弓弦エロすぎ」 「はあ、んッ、イかせて、もう無理、ぁあッ、きもちいい、出したい……ッ」 「このままイッて? 恥ずかしいとこ見てるから」 「あぁッ、やだ、んンッ……ぁ、あ、イッちゃ、あ、あっ……はぁ、」  触られていないそこがギチギチになって、射精感が高まる。  思わず手を伸ばそうとしたら、両手をがっちりホールドされた。  そして、より激しい動きでガンガン中を突かれる。 「ぁあ、で、でちゃう……ぁあ、ンッ、みないで、はあ」 「お尻でイッちゃうエッチな弓弦、見たいよ」  イヤイヤと首を横に振ってみても、蓮は欲しいところに触れてくれない。 「あぁ……っ、どっか、どっかなめてっ、おねがい、そしたらイくからぁ」  哀願すると、蓮はむしゃぶりつくように片方の乳首を吸い、転がし、片手でもう一方をぎゅうぎゅうとキツくつまんだ。 「ああああッ」  あごが跳ね上がり、蓮のものをくわえこむ後孔がひくついて締まる。  蓮は口を離し、再び勢いをつけて突き始めた。 「あ、もうダメ、ぁあっイッちゃう、んん、はぁ……っ、イク、イク……ッ」 「弓弦っ」 「イッ!……ぁあああああッ!……っ……!…ッ……!」  胸の辺りまで勢いよく熱いものが飛んでくる。 「あー……もうっ」  (せき)を切ったように、蓮が無茶苦茶に腰を振る。 「ぁあ、蓮っ、はげし……っん、やっ、はあ、きもちい、ぁあッ」 「……っはあ、……っ」 「あああっ……きもちい、中きもちいい、んあッ、」  何度も突かれて、何も考えられなくなってきた。  本能のままに言葉を垂れ流し、まだ達してちょっとも経っていないのに、また昇り詰めていく感覚に追い詰められる。 「あ、また出ちゃう、」 「っまじ?」 「はあ、ん……ッ、れん…めちゃくちゃにして、」 「え、弓弦、うそだろ」 「ぁあ……奥、おく、無理矢理犯して、んんっ、はあ」 「……バカっ、どうなっても知らないからな」  息荒く口づけられながら、文字通り犯されるようにめちゃくちゃに抱かれる。 「ぁああ、蓮っ、あんっ、もう出ちゃう」 「うん、見せて」  激しく腰を振りながらなめ回すように見る蓮の視線に興奮して、体が勝手に、見せつけるようにぐんと張り詰める。 「も、ぁあっ、イク、またいっちゃう、ぁああん、イク、イク……ッ……!…あああっ……!」  弾けるのとほぼ同時に、蓮も、俺の最奥で熱を放った。

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