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のどあめの効果はありません③※

 何言ってるの、聖南。  もっともらしく言うからつい「そうですね」って同調しそうになったよ。  L字型のコーナーソファは革張りだから全裸の俺は「ヒッ」って鳴く羽目になるし、俺に馬乗りになった聖南はいたるところをクンクンしてきてくすぐったいし。  カーテンの隙間から覗いた半月が、ジッと俺達を見てるような気がして落ち着かない。  朝はギリギリまで寝てるタイプの聖南はそんなに目覚めがいい方ではないけど、それを鑑みなくてもあの月が登った夜中が一番元気なんじゃないかな……。   「葉璃、いいにおい」 「……っ、…チョコのにおい、ですか? あっ……」 「葉璃のにおいと混ざってんのかもな。 すげぇ美味そう」 「わっ…、ちょっ……! んんっ…」  舌なめずりする聖南の麗しさったらない。  やらしいのに、それはどちらかというとセクシーな色気がムンムンで、温まったフォンデュ鍋から香るチョコのにおいと目の前の光景に、俺の視界はみるみる蕩けていく。  体温の高い聖南の手のひらは温かくて、素肌を撫で回されるとたちまち下半身が疼いた。 知らず知らずのうちに腰をモゾモゾと揺らして聖南を誘う俺は、いつの間にか大量のチョコに酔っていたのかもしれない。 「そろそろいいかな~」  チラとダイニングテーブルを見た聖南は、俺の上から降りた。  フォンデュ鍋を持ってリビングへ戻って来た聖南が、木製のスプーンを使ってほんのちょっとだけ味見をしている。 「ん、適温」 「…………?」 「どこに塗ってほしい?」 「……え? どこって……」 「あ、間違えた。 どこに塗って舐めてほしい?」 「えっ……? まさかそれ、俺の体に塗る気なんですか?」 「そうだけど? 葉璃が美味いって言うなら俺も食べたいじゃん。 ついでに、葉璃が「ココ食べて♡」ってリクエストしてくれた方が俺も嬉しい」 「えぇっ!? そ、そんな味わい方ないですよ!」  溶けたチョコレートをスプーンで掬い上げた聖南が、この状況下でふわっと微笑む。  何だかヤバそうな気配に、上体を起こしてさり気なく聖南から遠ざかろうとしたのに、腕を取られてまたお腹に乗られた。 ……重い。 「コラコラ、逃げんなよ。 熱くねぇから大丈夫だって」 「そんな心配はしてません! わっ、やだっ……離してください! ちょっ……ほんとにやだって……っ、うわわわ……っ」  ものは試しだと言いたげに、俺の両方の乳首のすぐ横に二回、ドロッ、ドロッとチョコを落とされる。  確かに熱くはない。 熱くはないけど……!  ヤンチャな笑顔を崩さない聖南は、「な?」と首を傾げた。 「熱くねぇだろ?」 「そういう問題じゃ……!」 「こういうのはその気になれば葉璃も楽しめる。 一時間後には、気持ちいい、美味しい、甘い、ヤバイ、死んじゃう、聖南さんもっと!って言ってるよ」 「い、言わないですよ! ……ゴホッ、ゴホッ……」 「おっ、効果を試す時が来たな」 「んむっっ!? んん、んっ……んんん……!」  何の効果?と、体にチョコを塗りたくられた衝撃でさっきの会話を脇に追いやってた俺の口の中に、スプーンが差し込まれる。  チョコが口いっぱいに広がる中、素早くそれを引き抜かれて今度は聖南の唇が降ってきた。  舌を器用に動かし、いつものように唾液を送り込んでくるから嚥下するのが大変だ。  絡み付く舌と、蕩ける甘いチョコレート。  喉にへばりつく甘さと風味が鼻からも抜けて、俺自身がチョコになっちゃったかもと錯覚するくらいの濃厚なにおいに包まれた。 「……んっ……んんっ、……んっ……!」 「葉璃、ちゃんと飲めよ」 「む、むり……っ、くるし……っ」 「ねっとりしてるよな。 苦しいの分かるよ。 でも飲んで」 「ん、むっ……! んんん……っ───」  無理だって言ってるのに、いじけたように瞳を細める聖南は構わず唾液を飲ませようとしてくる。  腰を撫でられて、嫌でも性器が疼いた。  縋るように聖南の両肩を掴んで、巧みな舌先が口腔内を自由自在に動き回るそれに必死についていく事しか出来ない。  甘い、ヤバイ、苦しくて死んじゃう───。  いま聖南の言葉を借りるなら、これしかなかった。

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