9 / 10

のどあめの効果はありません④※

 体中にチョコを塗りたくられて、めろめろされて、それがあんまりしつこいから俺は何回も逃げようとした。  執拗に乳首を嬲られては食まれ、それだけでイかされそうになったからだ。 「すげぇ……葉璃ちゃん、中まで甘そう」 「んぁ……っ……な、舐めないでよっ? そこは、だめ……!」 「分かってるって。 だからここはローションにしてる」  あ、そうなんだ……てっきり孔までチョコまみれになってるのかと思った。  聖南はぐちゅぐちゅと二本の指を抜き差しして孔を解しながら、左手で器用にスプーンを持つ。  鍋から掬って俺のヘソ横に垂らしたそれを、美味しそうに舐め取っていく辛党の聖南。  フォンデュ鍋は小さいとはいえ、甘いものが苦手な聖南が俺に塗りたくった量はきっと、明日には胸焼けを起こすくらいだ。  背中を仰け反らせてしつこい愛撫に悶えた俺は、何回も「もうやめて」って言ったからね。  調子にのってめろめろし続けた聖南が、明日にはぐったりなってても看病してあげないもん。 「……フッ……」  くすぐったさと、チョコを舐め取る熱い舌に背中を震わせていると、突然聖南が笑みを漏らした。 「え、……っ? なに、……?」 「いや……葉璃とチョコと先走りが混ざってんの。 絶妙な味になってる」 「あっ、そ、そんなとこ舐め、っ舐めるから……!」 「葉璃、体起こせる?」  じゅぷっと音を立てて指を引き抜いた聖南に、背中を支えられて上体を起こす。  襞を擦って痺れるような快感を与えてくれていた指先が唐突に引き抜かれて、まるで寂しがるように孔がはしたなくヒクヒクした。  体を起こすと、聖南の反り返った性器に自然と目がいく。  ほんとは聖南のものを舐めたいけど、俺も後ろは舐めちゃダメって言ってあるから我儘は言えない。  聖南は俺がほんとに嫌がる事はしないし、だから俺も聖南の言う事は出来るだけ聞いてあげたいんだ。  ……全身チョコまみれになるとは思わなかったけど。 「力抜いてろよ」 「あ、えっ……ほんとにここで、?」 「何のために部屋飾ったと思ってんだよ」 「……っ! ん、ん、っっ……や、やっ……」  腰を掴まれて、ゆっくり下ろされてゆく。  聖南の性器の先端が孔をじゅく…と貫くと、指先とは比べものにならない存在感に身を打ち震わせた。  押し挿入る熱量によってじわじわと中が拡げられていき、腰を落とす毎にとてつもない圧迫感と刹那的な快感が入り交じる。  瞳を瞑って、あんまり働かない頭をフル回転させた。  何のために飾ったのかって……。  マメな聖南が、俺と少し早いクリスマス気分を味わいたいと思ってくれたから……キラキラした様々な色の小さな灯りと、射し込む月灯りが合わさるとすごくロマンチックだから……聖南の答えはそれしかないはず。  ガッシリとした肩に手を置いた俺は、おでこを聖南のほっぺたに摺り寄せて甘えた。  聖南の優先順位はいつも、俺が一番。  優しくて、かっこよくて、アイドル様なのに裏表がまったく無い、明るくて眩しい自慢の恋人。  寄り添い合うシチュエーションなんかなくても、家での聖南は俺にくっついて離れない。  秘密の関係だからこそ、せめてプライベートではロマンチックなイベントを盛り上げられたらいい……ほぼ徹夜でリビングを装飾した聖南からは、そんな思いが伝わってくる。 「葉璃」 「……っ、……っ?」  根元までギッチリと嵌まった熱い性器が、中でドクドクと脈打っていた。  震わせた背中を慄かせる俺の中は、蠢く事もままならないほど聖南に犯されている。  慣らすために動きを止めてくれた聖南にしがみついて、深呼吸を繰り返していると名前を呼ばれた。 視線がぶつかり、一見冷たそうにも見える真剣な表情で聖南が俺を見下ろしている。 「同棲始めてから、俺ずっと夢見てたんだよ。 リビングでのセックス」 「…………え、……?」 「ベッドルーム、キッチン、リビングは制覇したから、あとは書斎と衣装部屋だな」  ───聖南さん、……?  ……俺、勝手に聖南の気持ちを読めた気でいてキュンキュンしてたんだよ?  ちょっとどころか、かなり、かなり、惚れ直してたとこなんだよ?  歌披露の本番前くらい真剣な表情なのがまた、なんとも言えない脱力感を誘った。

ともだちにシェアしよう!