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捜索5
相手からの情報を引き出すには、自分の情報を多少なりとも晒さなければならなかった。
現時点で向こうが知っているのは石川という偽名と、同じ県内に在住していることのみ――年齢を若く設定して向こうと同年代だった場合、昔話に花が咲いてしまった際にしくじる可能性があるので、あえて実年齢を公表する。
『はるさん、初めまして。石川です。サイトに書き込んだコメントについて、わざわざ感想をいただきましてありがとうございます。
20代後半という年齢なもので、いろいろ苦労をしていることもあり、悩んでいる方の手助けになれるならとアドバイスしています。はるさんも何かしら、悩みを抱えているのでしょうか』
他人の悩みに対し、積極的にアドバイスしている高橋にアクセスしてくる時点で、悩みを抱えているのが明白だからこそ、語りかけるように訊ねて、相手の情報を引き出した。
あらかじめ考えていた、あっさり目のコメントを書き入れ、微笑みながら送信ボタンを押す。
(悩みが深ければ深いほど、間違いなく返信は早いだろうが、いずれにせよサブのサイトのユーザーを相手にするよりも、引っ掛けやすいメインから獲物を探していかなければ)
この日はサブのサイトの書き込みに目を通さず、以前メインで自分に積極的に接触してきたユーザーとの会話を楽しんだ。住んでいる場所も適度に近かったため、逢う約束をしてから会話を終え、サイトの書き込みにしっかりと目を通してから就寝した。
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