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逢瀬

 待ち合わせ場所は、高橋の住んでいる隣町の駅前で設定した。身バレを防ぐのはもちろんのこと、仕事でよく赴く場所だった土地勘のある隣町を使うことにした。  駅前にある噴水前を待ち合わせにしたが、他にも数人同じように待ち合わせに使っているようだが、女性ばかりなので、すぐに相手が自分と分かるだろうと踏んだ。  サイトのメッセージのやり取りでは、中山くんとのやり取りに負けないくらいに盛り上がった。しかも向こうから逢いたいなんて言ってくるとは思わなかったので、高橋の胸中はワクワクしていた。あまりにも興奮して、20分前にここに到着してしまったくらいに――。  そわそわしながら待っていると、駅構内から出てきた長身の男性が辺りを見渡し、首を動かしているのが目に留まった。  少しだけ長い前髪を七三分けにして、癖のある柔らかそうな毛先が吹いている風になびいていた。その髪の下にある面差しは、見惚れてしまいそうになるくらいに整ったものだった。 (衝撃的だった中山くんのダイナマイトボディが霞んでしまうくらいに、神々しいほどのイケメンじゃないか) 「あの、石川さんですか?」  予想を超えた事実に茫然自失しているところに、ハンドルネームで話しかけられた。長身の彼が見下してくる視線が、どこか戸惑っているようにも見える。 「はるくん、かな?」  自分同様にネットでのやり取りの中で、彼がイメージしたであろう人物との違いに、多少なりとも戸惑いがあるのかもしれないと考えて好印象を与えるべく、いきなり大笑いしてみせた。  嘘笑いでも涙が滲むので、それを拭ってから口を開く。 「はるくん、想像以上にすっごくイケメンで驚いてしまったよ。コメントはいつも思い詰めていて、死にそうな感じの文字の羅列だったから、もっさりとした根暗なイメージを抱いていたんだけど。これほど真逆だとは思わなかった」 「石川さんのコメントには、すっげぇ助けられました。悩んでいるのが、バカらしくなるくらいに」 「ははっ。掲示板では偉そうなことを言ってるけど、こんな小さいオッサンが書き込みしたのを知って、実際は失望しただろ?」  後頭部をばりばり掻きながら告げると、慌てた感じで顔の前で手を横に振る。 「20代後半はオッサンじゃないと思います。それに石川さんがとてもいい人なのは、今までのやり取りで分かっていますから。失望なんてしません」 (こっちの思惑通りに受け取ってもらえて、嬉しい限りだよ――)

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