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逢瀬4
目の前で整った顔を歪ませる表情を上目遣いで見つめつつ、親指に柔らかい舌をねっとりと絡ませ、音を立てて吸い上げてやる。
「あっ、ぁあ……」
声にならない声を出し、抵抗しようとする力を抜こうと、手首の内側を感じるように撫で擦った。
「いっ石川さん、止めてください」
「これよりも気持ちのいいコト、俺なら教えてあげられるよ」
瞳を細めて低い声で告げると、息を飲んであからさまに狼狽える。
「これよりもって……」
「するかしないかは、はるくん次第。どうする?」
選択権を委ねてから、青年の手を解放してあげた。慌ててそれを引っ込め、テーブルの下に隠す控えめな様子は、まるでフルコースの前菜のようだと感じた。
先ほど触れた柔らかくてしなやかな肌を思い出し、心の中で舌なめずりをする。早くメインディッシュを食わせろと高橋が答えを急かそうとした矢先に、青年が観念した表情を浮かべて小さく頷いた。
それを目の前でしっかりと確認してから席を立ち、恥ずかしそうに頬を染める表情を見ながら、肩にそっと腕を回してやった。
「はるくん、行こうか」
高橋に促され喫茶店を出る。途中で帰ると口にするんじゃないか内心冷や冷やしつつ、少しだけ離れているホテルに向かった。
ホテルの部屋の鍵を開けて青年を先に中に入れた高橋は、おどおどしているひょろっとした躰にいきなり抱きついてみた。
「ひいっ!」
妙な悲鳴を上げると、青年よりも小柄な高橋の腕を強引に振り解き、首をキョロキョロ動かして後ずさりする。大きな躰を震わせ、怯えまくるその姿が可愛らしくて、腕を掴んで逃げないようにしようとしたら。
「ごめんなさいっ、先にシャワー浴びてきます!」
近づいた高橋の躰に体当たりして思いっきり突き飛ばし、すぐ横にある扉を開けて中に閉じこもってしまった。
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