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逢瀬6

 手にしたサイダーをテーブルに置き、ポケットに入っている薬の包みをふたつを取り出して、並べるように隣に置いた。 (美麗な青年の、はじめてを悦いものにするには、安定剤と催淫剤のどちらが有効だろうか――)  これまでのネットでのやり取りと、直接顔を突き合わせてからのやり取りを考慮し、高橋が選んだものは安定剤だった。ホテルに着いてからの緊張の具合や、彼の心を支配しているであろう、後悔の念を取り去るのに、安定剤がよく効くだろうと思ったのが、チョイスした結果だった。  テーブルの上に設置されている、透明の小さなガラスのコップを掴み、サイダーのペットボトルを開けると、三分の一だけ中身を注ぐ。間髪入れずに安定剤の粉薬を投入したら、炭酸が一気に弾けて泡立った。  コップの中身が落ち着くまで、数秒間そのままにしてから、八分目までゆっくりと注いだ。ほどなくしてシャワーの水音がぴたりと止んだのを察知し、椅子から立ち上がって、着ていた服を次々と脱いでいった。  座っていた椅子に、衣類を適当に置いてベッドに腰かけ、何事もなかったように見せかけると、バスローブを身に着けた青年が、恐るおそる風呂場から顔を覗かせる。 「やっと出てきた。随分と念入りに洗ったんだね」  ベッドから腰を上げた、高橋の裸体を目の当たりにしたせいか、視線を彷徨わせる姿に吹き出しそうになる。一息ついてから、宥めるように青年に声をかけた。 「テーブルに、冷たいサイダーを用意しておいたから。それ飲んで待っていて」  すれ違いざま青年の頬にキスを落とし、バスのある扉の中に姿を消す。何も考えずに薬入りのサイダーを口にしますようにと祈りながら、シャワーを浴びたのだった。

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