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逢瀬12

「君が喫茶店でトイレに行ったとき、鞄に入っていた身分証を見ただけ」 「…………」 「さっきの写真を見せながら、はるくんがゲイだってことをお友達に教えたら、さぞかし信ぴょう性が増すだろうね」  絶望のさまを顔色で表した青年を、高橋は下卑た笑みを浮かべて見下ろした。 「調教はまだはじまったばかりなんだから、楽しまなきゃ。お互い、気持ちいいコトするんだしさ」  高橋の言葉に、青年の口元が僅かに動いた。だがそれは言葉にならず、空を切って終わる。 「俺好みの男にしてあげる。手取り足取り、いろいろ教えるからね。いいコにしていないと、どうなるか分かるだろ?」 「……写真をバラまく」  眉根を寄せて心底嫌そうな顔をしながら、震える声で渋々告げてきた。  彼の頭の中は今現在、何を考えているのだろうか。喫茶店で見事に流され自分について来たことを、今になって激しく後悔しているかもしれない。 「察しが良くて助かるよ。それじゃあまずは俺のを、はるくんの口で綺麗にしてもらおうかな。さっき俺がしたみたいに、やってみてごらん」  心のダメージが倍増させることを、優しい口調で告げてやった。ダメージが大きくなればなるほど何も考えられなくなり、どんな要求でも飲み込んでくれるからだ。  卑猥な写真という、物理的な強迫と精神的な苦痛を与え続け、自分に縛りつけて離れないようにする。高橋の飽きがくるまで、延々と繰り返されるのだった。

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