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別離2
言いながらポケットからスマホを取り出し、手早く操作してから、青年に手渡してやった。画面に表示されている画像は、彼を脅すために撮影したもので、それを見た瞬間に青年の眉間に深いしわが刻まれる。
「それ、削除していいよ。やり方分かる?」
何も言わずスマホの画面を食いつくように見つめると、両手の指先で操作して、素早くそれを削除した。
「石川さん他の媒体に、この写真を記録していたりなんて」
「そんな面倒なことをしちゃいない。誤ってその画像が他人の目についたら困るし、悪用されたら堪ったもんじゃないからね。貸してごらん?」
青年に向かって左手を差し出したら、やんわりとスマホを返された。
高橋の手元と顔を交互に見比べる視線を感じつつ、外部メモリを表示させ、くるりとスマホを反転させて青年に渡した。
「ついでに、はるくんの名前を消してくれ。本名で登録してある。それからスマホ本体に入っている方も」
訝しげな表情を崩さずに、自分のプロフィールをスムーズに削除し終えてから、スマホの検索機能を使って、改めてチェックする慎重な様子を見て、高橋がぽつりと呟いた。
「信頼されないのは当然だよな」
これまでおこなってきた仕打ちを振り返りながら、ちらっと隣を見る。さっきまではちょっとだけ背後を歩いていた青年が、自分の隣にいることを嬉しく思った。そんな感情が優しい口調となって、口から飛び出る。
「俺と違ってこれから逢う人は、安心できるヤツだよ。何かあったら遠慮なく、相談するといい」
自分よりも背の高い青年に手を伸ばして、頭を撫でてやる。突飛な高橋の行動に驚いたのか、青年は目を見開きながら見下してきた。
「……はるくんにこんなことをしたって、安心感を与えられるわけじゃないのに、何をやっているんだろ」
まじまじと見つめられたせいか、高橋はらしくないくらいに動揺するなり、慌てて手を引っ込めた。頬に溜まっていく熱を感じて俯き、視線を意味なく彷徨わせる。
「あの、これお返しします」
青年が、自分の個人情報諸々をを削除したスマホをそっと差し出すと、手間をかけさせたねと無理やり平静を装って告げてから、スーツのポケットに忍ばせた。
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