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ゲイバーアンビシャスへの再来前日譚

※【どういうことだよ!?】第3幕(過去の想い:愛をするということ)の中で、ゲイバーアンビシャスに江藤が顔を出す、前日のお話になります。 ***  美麗な青年、江藤と別れて数年が経ったある日、牧野に頼まれた仕事を手に、かつて働いていた支店に顔を出した。  高橋のいた部署は既になくなっており、見知った社員の数も明らかに減っている様子に、こっそりため息をつく。再会を喜んでくれる同僚なんていない確率が高いのに、期待してしまった自分に、ほとほと嫌気が差した。 「高橋さんがわざわざこちらにお越しくださるとは、恐縮の極みですな。本来なら我々が、本社に出向かなければならないというのに」  目の前にいる、とある部署の部長が喋りだしたのを横目で見るなり、腰ぎんちゃくと思しき中年が何度も首を縦に振りつつ、蠅のように両手を擦り合わせて口を開く。 「誠に申し訳ないですよねぇ。人件費削減のせいで人手が足りないせいで、本社にお伺いすることができないんですから」  会議室にいる面々がそれぞれ思うことを、嫌味混じりに吐き出していった。  高橋の栄転をよく思わない社員は支店だけじゃなく、本社にもかなりいて、こうしてあからさまな嫌がらせや陰口を叩かれた。  こうなることは、牧野から本社に来いと言われた時点で予測できていたし、ある程度の覚悟もしていた。  ときには牧野の命令で、まったく好みじゃない相手を抱くことがあった。すべては、相手の弱みを握りしめるために――以前自分がおこなっていたことを、命令ひとつで容易く実行に移していくうちに、高橋のモノが機能不全に陥った。 『こういうことをしたくないからって、僕に嘘をついてるわけじゃないよね。大事なモノが機能しなくたって、頭のいい高橋くんなら、別の方法を知っているだろ』  下卑た視線を浴びせながら、恐喝の道具となっている例の写真を見せびらかせる牧野をぶち殺してやりたいと、脳内で何度も抹殺した。 (これが、因果応報というんだろう。はるくんが俺に思っていた気持ちは、今まさに自分が考えていることだ――)  嫌な命令も、他人にどんなことを言われても、仕事で妨害行為を受けても、高橋は平然としていられた。  青年と別れたあの日のつらさに比べたら、苦痛に感じるどころか、こんなの楽勝だと笑うことができるくらいの余裕があった。  不平不満をぶちまけた、社員の顔をひとりずつ食い入るように眺めながら、優しく微笑みかける。対照的な高橋のその態度に焦ったのか、波が引くように苦情がなくなった。 「さてと……。静かになったところで、本題に入りましょうか」

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